年末恒例の「2024ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)が2日に発表され、俳優の阿部サダヲ(54)主演で今年1月期に旋風を巻き起こしたTBS金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」(金曜後10・00)の略称「ふてほど」が年間大賞に選ばれた。今年のドラマ界を席巻した「ふてほど」とは、どんなドラマだったのか。
ドラマ関連ワードが大賞に選ばれるのは、2013年に大賞に輝いたTBS日曜劇場「半沢直樹」の名ゼリフ「倍返し」以来、11年ぶり。誰もが知る「倍返し」以来の快挙となった「ふてほど」は、宮藤官九郎氏がオリジナル脚本を手掛けたヒューマンコメディー。主人公は1986年(昭和61年)から2024年(令和6年)にタイムスリップしてしまった“昭和のダメおやじ”体育教師の小川市郎(阿部サダヲ)。彼の“不適切”な言動がコンプライアンスで縛られた令和の人々に考えるヒントを与えた。
劇中では、現代なら“炎上必至”なコンプライアンス度外視のハラスメントワードが満載。「起きろブス!さかりのついたメスゴリラ!」という強烈なセリフで幕を開け、視聴者に大きな衝撃を与えた。
毎回、昭和と令和のギャップなどを小ネタにして爆笑を誘いながら、「多様性」「働き方改革」「セクハラ」「既読スルー」「ルッキズム」「不倫」「分類」、そして最終回は「寛容」と社会的なテーマをミュージカルシーンに昇華。コンプラ社会に押し付けがましくなく一石を投じる宮藤氏の意欲的な筆が冴え渡り、SNS上で大反響を呼んだ。
物語では、毎話ごとに「○○しちゃダメですか?」とサブタイトルが設けられている。宮藤氏は制作発表記者会見の際、「何でも“ダメ”って言葉に終わりにして、なぜダメなのかを考えなくなってきているな…と実感して。なぜダメなのか。この続きを、みなさんで話し合ってほしい」と視聴者へ呼びかけていた。
また同作は、今や「今年のブレーク女優」ランキングの常連となり、お茶の間に浸透した女優・河合優実の地上波連続ドラマ初レギュラー作。平成生まれながら、主人公の一人娘で昭和のスケバン役に完全変貌を遂げ、「令和の百恵ちゃん」と大反響。お茶の間の知名度を一気に高め、その後地上波初主演、主演映画、声優初挑戦とスターダムを駆け上がった。
令和と昭和の異なる常識と価値観のズレが引き起こす摩擦と笑いが、あらゆる世代に刺さった同作。ギャラクシー賞をはじめ、ザテレビジョンドラマアカデミー賞や放送文化基金賞、ATP賞テレビグランプリなど数多くの賞を受賞した。「東京ドラマアウォード2024」では作品賞(連続ドラマ部門)優秀賞、脚本賞(宮藤官九郎氏)、演出賞(金子文紀監督)、主題歌賞(Creepy Nuts「二度寝」)を受賞し、「17冠」の表彰ラッシュ。名実ともに流行語年間大賞にふさわしい作品となった。
同作の反響は日本にとどまらず、世界にも。8月には「韓国リメーク版」の制作が決定。韓国の制作会社Basestory社と契約締結し、現地の文化や視点を盛り込みアレンジするといい、日本版の魅力をどう韓国版に落とし込み、現地の文化や視点でどのようにアレンジされるのか、注目が集まっている。