【ROAD TO 甲子園ボウル】雲ひとつない青空が、激戦を勝ち抜いた両校を祝福していた。2日の甲子園ボウル発表会見。2年連続出場の法大に対し、立命大は9年ぶりに立つ聖地だけに、山嵜大央主将の「ここに来ても実感がない。夢かなって」の言葉に重みがあった。
東日本と西日本の枠を撤廃したトーナメント元年。史上初となる同地区対決の可能性も秘めながら、最後は関東、関西の1位校が学生日本一を争う舞台にたどり着いた。ただ、出場校の決戦に向けた自信、そして手応えは、昨年までと計り知れない。法大は甲子園ボウル6連覇中の関学大、立命大はリーグ戦で敗れた関大を下した早大を準決勝で撃破。法大・矢澤正治監督は「関学さん、立命さんと秋に真剣勝負ができるのは本当に素晴らしいこと」と歓迎した。
チームを率いる法大・矢澤監督、立命大・高橋健太郎監督は、いずれも就任1年目。選手として甲子園を戦った共通項がある。矢澤監督の指導方針はシンプル。自身を「最終判断する人、負けた時の責任を取る人」と位置づけ、選手、スタッフがそれぞれの役割を果たせる環境づくりに腐心する。試合中も、「スタート」「フィニッシュ」「目の前のプレーに集中」「プレースピード」しか言わない。「全てのプレーを肯定的に解釈できるかが大事」の哲学を持つ。
あくまで法大フットボールの追求を目指す敵将に対し、高橋監督はさまざまなアプローチで強化を図った。8年間、関学大の壁にはね返されたチームの再建を託され、関西電力を退職。就任と同時に実施したアンケートで、自己肯定感の低い選手が多いことに驚いた。
「正直、(甲子園で2連覇した)自分たちのようなレベルに引き上げるには2、3年かかると思った」
練習中、音楽をかけて雰囲気をつくり、トレーニングの合間にハイタッチなどで図るスキンシップを「フィジカルタッチ」と呼び、励行した。ストレングスコーチに「日本のアメフト界で最も厳しいメニューを」と要求。ベースとなるフィジカルを徹底的に鍛えたことが財産になっている。
今季唯一の黒星を喫した関大戦後、指揮官はサイドラインの中央で指示を出すのをやめ、常に選手に駆け寄り、声を掛けるスタイルに変えた。「縦横無尽に走り回ってゲームマネジメントしている方が自分らしくて、いいような気がして…」。静と動の指導者対決。頂上決戦は、信念の戦いでもある。 (堀田 和昭)
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