佐々木の代理人ジョエル・ウルフ氏は、マイナー契約となる「25歳ルール」での早期移籍の理由に、佐々木の幼少期の経験を挙げた。
「彼の人生で起きたいくつかの悲劇を見れば、彼は何事も当然のことだと思っていないことが分かる。彼は世界をとても違った目で見ていると思う」
明言しなかったが「悲劇」とは、11年3月11日の東日本大震災。9歳の朗希少年は37歳だった父・功太さんと祖父母を失い、家は津波で流され、岩手県陸前高田市から大船渡市への転居を余儀なくされた。「朗希の観点では野球にも人生にも絶対的なものはない。だから、彼に“2年後に3億~4億ドル(約456億~608億円)の契約が取れる”とは言えない」とウルフ氏。「朗希を説得できる人は誰もいない。彼が私たちを説得する。彼は自分で自分の船を操縦し、彼がボスだ」と23歳右腕の決意を強調した。
当初から強い意志を感じていた。初対面は「21年か22年の冬」。顧客だった筒香(現DeNA)と共通の知人を通じて会い「米国に来ることを決意し、早く来たいと望んでいることが分かった」という。ただ、球団のポスティング容認などハードルは高く「非常に困難で、何かができると彼に保証することもできなかった」と述懐。それでも早期移籍を訴えたことを示唆し「メディアから多くの批判を受けると彼は分かっていた。大いに批判された。それでも彼は決意を固め、決して諦めなかった」と振り返った。
メジャー移籍容認発表以前から、米国ではドジャースとのタンパリング疑惑が取り沙汰されていた。だがウルフ氏は「いくつかの告発や申し立てがあったが、全て虚偽のものだ」と完全否定した。今後、一緒に交渉を行っていく右腕を「物静かだが、ユーモアのセンスがあり、とても機転が利く。口数は多くはない」とメディアに紹介。そして口数が多い人を好まないと付け加えてこう言った。「とても重要なことを説明し、最後に何か質問はというとこう言うんだ。“ずいぶんしゃべりましたね”と」。そう場を和ませて、本格交渉の幕開けを宣言した。
≪カブス・誠也のトレードは否定的≫ウルフ氏は、担当するカブス・鈴木について浮上しているトレードの可能性には否定的な見解を示した。前日にカブスのジェド・ホイヤー編成本部長と話したことを明かし「誠也はトレード拒否権を持っている。どのチームだったら(トレードを)検討するか(ホイヤー編成本部長が)私たちに話してくれた。そうなる可能性は低いように思える」とした。また、同じく担当で今季、右肩や左ふくらはぎを故障した千賀については「千賀はいい状態だ。完全な状態になろうとしている」と話した。