M-1グランプリ3回戦敗退はかなりショックだった2人。思わず恨み節もこぼれ落ちた。それでもあくまで前向きに来年への意気込みを語りつつも、思い描く将来像は少し違う。
【翠星チークダンスインタビュー(2)】
◆◆ ちろる推しの男性ファン「増えたな~」 ◆◆
―来年3月に行われるytv漫才新人賞決定戦への進出、おめでとうございます。どうでしょう?状況は変わってきましたか?
木佐「それほどですねえ(笑い)。優勝すればまた違う形になるかもしれないですけどね」
ちろる「私たちにライトなファンがつくイメージがなくて。例えば男性コンビとかやったら、女の子ファンが“かわいい、カッコいい、ちょっと見にいってみよう”みたいなのがあると思うんですけど、私たちそのタイプじゃなさすぎるんです。でも、これきっかけで深く知ろうと思ってくれるファンが増えてくれたらいいなとは思います」
―ちろるさん目的の男性ファンはどうなんですか?
ちろる「少しずつ増えてきている気はしますね。ライブでも1~2割は男性になってきてますから。いや、確かに増えたなー(笑い)。それこそ露出が増えたということもあって男性の目に触れることも増えて、その人たちが足を運んでくださっている気がします」
木佐「ぼくも最近は男性のファンが増えてきましたね。ラジオをやってるというのもあるのかもしれないんですけど、そこで好きな映画や漫画の話とかして、見てきました!とか反応があったりで、ジワジワですが増えてはきていますね」
ちろる「なんか私らの場合はコンビのファンというより、それぞれのファンが増えてきてる感じです」
木佐「そう、たぶん過半数は片方しか好きじゃないって感じ」
―その一方でM-1は残念な結果でした。お2人はどように受け止めていらっしゃいますか?
木佐「うーん、そうですねえ、どう言ったらいいんやろ。言い方が難しいですが、長い目で見たら悪くなかったかもしれないです。日本人って負けてる人が好きじゃないですか?決勝に行った人より、準決勝とか敗者復活でめっちゃ良かったのに行けなかった人を来年応援しよう!みたいなところもあるんで、3回戦というだいぶ下ではありますが、そのちっちゃい感じはあったかな?と思ってます。なんか少しずつ準決勝、決勝に近づいているとは思いますね」
ちろる「私はネタがM1にハマっていないのかな、と思いました。ウケは良くても審査員さんにアピールできていないのなら、ちょっと難しいのかもしれません。でもウケてなくて上がるよりかは、ウケてて落ちるほうがいいのかなというのが正直な気持ちです。この人たちに負けるんか、と思ってしまった部分もあったんです。でも、私が思うということはお客さんも思ってくれてたはずなので、いい意味で議論に上る芸人になることができたのかなと思っています。ただこのままではまた同じなので、少し考えないといけないかなとは思ってます」
木佐「だいたいの賞レースは、決勝は芸人さんが審査してくれるんですが、そこまでは違うので。ytvは良かったんですけどね」
―芸人さんと構成作家さんとかでは、やはり違うんですか。
木佐「やっぱりニュアンスのくみ取り方が大きく違うんです。ネタを作っているかいないかの差なのかもしれません。ぼく、準々決勝も全部見たんですが、からし蓮根さん、ミキさんが落ちたのはびっくりして。特にからし蓮根さんはすごかったのに。ただ敗者復活や決勝は芸人さんが審査員ですから。ぼくは芸人さんに審査してほしい。でもやはり、その場に立てるようなネタを考えていかないといけないのかなとは思います。とにかく、3月のYTV漫才新人賞は芸人さんが見てくれるので、なんとかそこは頑張りたいですね」
◆◆ それぞれの将来像へ向けて ◆◆
―もちろん、現在の若い漫才師として、賞レースは不可欠とは思いますが、その中でどんな将来像を思い描いていますか?
木佐「やっぱり、いろんな漫才を作っていきたいと思います。それを前提として、ぼくは趣味が多いんです。マンガとかは大阪芸人の中では一番詳しいと思いますし、映画であったりゲームであったり、そういうカルチャー系にはすごい興味があるので。ポケモンカードゲームの審判の資格も持っていて、大会とかにも出ています」
―それはすごい。
「そういう多趣味なところを仕事で広げていきたいんですけど、それには名刺代わりに賞もほしいんで、だから結局漫才頑張らなあかんな、と思ってます。でも、漫才でもしっかり勝負になるなと思ったのはここ最近ですね。やっぱり大学とか出て、しっかり社会経験を積んでNSCから出てきた人たちは説得力があるので。ぼくらは最初のころはクソガキでしかなかったと思うんです。漫才という職業も職人なところはあるので、結局ある程度仕事ができるようになるまで10年かかったな、とは思いますね」
ちろる「私は台本を感じさせない漫才、やすともさんのような漫才が理想的と思ってるのですが、そこには全然ほど遠いので、もっと頑張らないと、とは思ってます。でも、理想は徐々に漫才をフェードアウトしていって、おのおのが自立して仕事できる関係が理想ですね。お芝居とか声の仕事とか、やりたいことがいろいろあるし、声優学校に通ってたこともあったのでそっちを生かすことができたらなと思います」
―ときどき漫才をするという感じですか?
ちろる「たまにでいいです」
―(笑い)とおっしゃってますけど。
木佐「個人の見解ですので、しょうがないですね(笑い)」
ちろる「でも、漫才の技術はもっとあげたい。まだまだ技術が足りなくて芝居臭くなってしまうんですよね。そこがなかなかM-1で結果が出ない理由かもしれないし。台本が見えてこない自然さを出せるかというのが私たちの課題やと思ってます。それをどう克服していくか。それが成長につながって結果につながると思ってます」=終わり
【取材を終えて】高校生でタイトルを獲ってからつい最近まで、翠星チークダンスの才能は萎縮していたのではないか?そんな感想を持ったインタビューだった。
高校生チャンピオンなのだから素質は一級品のはず。しかし、高校卒業後にストンと落とされたこの世界に同世代は皆無。芸人仲間も客席も社会経験を積んだ大人ばかりで、伸び伸び自信を持って芸を見せることができなかった。それでも「10年かけて」人間的成長に自信が持てたため、いま才能が大きく開花されようとしている段階ではないだろうか。
M-1こそ敗退したが、NHK新人お笑い大賞、ytv漫才新人賞としっかり結果を残ている。マグマはしっかりたまった。後は爆発を待つだけだ。(江良 真)
◇翠星チークダンス第7回単独ライブ「一目惚れだったよ」(よしもと漫才劇場)12月14日開演21時。前売1500円、当日1800円。問い合わせFANYチケット(0570-550-100)