阪神が来季の新外国人に前フィリーズのニック・ネルソン投手(29)を最有力候補に挙げていることが12日、分かった。20年に名門・ヤンキースでメジャーデビューした右腕は最速158キロを誇る直球に加えて今季は“魔球”のナックルボールも習得。ナックルを駆使し通算100勝を挙げた球団のレジェンド助っ人、ジーン・バッキーとも重なる男が、V奪回の使者となるかもしれない。
剛腕にして“魔球”の使い手が虎の新助っ人候補だ。ネルソンは直球の最速が158キロ。パワーピッチャーのタイプに思えるが、変化球も一級品だ。チェンジアップに加えナックルボールを操る。
今季、メジャーで最後の登板となった9月6日のマーリンズ戦。8回のマウンドで、先頭打者を空振り三振に仕留めたのは打者へ向かっていくように揺れ動くナックルボールだった。球速は130キロを計測。一般的に110~120キロ台が球速帯とされる中で高速な部類に入る勝負球は今季マイナーで習得に成功した。
「虎とナックルボール」は吉兆の組み合わせでもある。阪神で通算100勝をマークしたバッキーはナックルボールの使い手で当時、巨人の主力だった王、長嶋らを封じ込めた。来季は球団創設90周年のメモリアルイヤー。“バッキーの再来”がV奪回への使者となるかもしれない。
ネルソンは16年のドラフト4巡目で名門・ヤンキースに指名されプロ入り。マイナーで主に先発として経験を積むと、20年8月1日のレッドソックス戦でメジャーデビューを果たし、中継ぎで3回無失点の快投を披露して初登板初勝利を挙げた。21年11月にトレードでフィリーズに移籍し、22年には救援で起用され47試合に登板し3勝2敗、防御率4・85を記録。今季は4試合登板に終わったが、メジャー通算74試合で5勝4敗、防御率5・20の成績を残している。
10月にフィリーズをFAとなったネルソンを阪神は早い段階から来季の新助っ人候補としてリストアップ。長身左腕で前ダイヤモンドバックスのローガン・アレンらも候補に挙がる中でネルソンを最有力候補とする方針を固めた。
獲得に成功した場合は先発として起用されるもよう。今季8勝をマークし、来季は来日3年目となるビーズリーとの共闘はもちろん、リーグ屈指の陣容を誇る先発陣にさらなる厚みをもたらす可能性は高い。聖地で“魔球”をお披露目する姿が待ち遠しい。
◇ニック・ネルソン 1995年12月5日生まれ、米フロリダ州出身の29歳。16年ドラフト4巡目(全体128番目)でヤンキースと契約。20年8月1日のレッドソックス戦でメジャーデビュー。今季はフィリーズで4試合、傘下の3Aで34試合に登板。1メートル85、92キロ。右投げ右打ち。
▽ナックルの使い手 現在の日本球界で、ナックルボールの使い手はほとんどいない。近年ではロッテ、巨人などで活躍し通算78勝を挙げた左腕・前田幸長や、07年に広島でプレーしたフェルナンデスがいる。女子選手では「ナックル姫」の愛称で知られた吉田えりが独立リーグや米球界でプレーした。
≪今オフ新助っ人3人獲得へ、嶌村球団本部長が明かす≫
阪神は今オフ、3人の新助っ人を獲得する方針だ。嶌村聡球団本部長は、これまでに「支配下外国選手は5選手でいきたいと思っている」と明かしていた。既にゲラ、ビーズリーの残留が決定。先発型のネルソンを獲得できれば、野手と救援投手が残るピースとなりそうだ。チームの育成には、投手のマルティネスとベタンセス、野手のアルナエスがいる。仮にめぼしい外国人投手を獲得できなかった場合、マルティネスとベタンセスのどちらかを支配下選手に昇格させる可能性がある。