◇「光る君へ」藤原道長役・柄本佑インタビュー
脚本家の大石静氏(73)と女優の吉高由里子(36)が3回目のタッグを組んだNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は15日、15分拡大で最終回(第48回)が放送され、完結した。「源氏物語」の作者・まひろ/紫式部と源倫子の“ラストバトル”、時の最高権力者・藤原道長の最期、そして、まひろの再びの旅立ち…。俳優の柄本佑(37)が従来の“悪人イメージ”とは一線を画した新・道長像を体現し、SNS上などで反響。柄本に撮影の舞台裏を聞くと、道長の最期を演じるために1日で体重を4キロ落としたことを明かした。
<※以下、ネタバレ有>
「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛けた大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となった。
最終回は「物語の先に」。道長は史実通り、62年の生涯に幕を閉じた。
最初に台本を読んだ印象について、柄本は「終盤にかけて彰子(見上愛)が逞しくなっていきましたけど、最終回は女性の強さの極み。大石さんらしい、このチームらしい道長の最期だなと思いました」と第一声。
源倫子(黒木華)の計らいにより、まひろ(吉高由里子)と“2人の時間”を過ごしたものの、道長は誰に看取られることもなく旅立ち。倫子の目に涙はなく、台本のト書きには「…(これでわたしの人生の第一章は終わった、の心)」とあった。
「準備稿のト書きはもっと強い感じの言葉で、倫子の前向きな気持ちが表現されていました。男性のロマンチシズムと女性のリアリズムが非常に面白く共存している場面じゃないでしょうか。まあ、男は情けないですよね(笑)」
道長が病床に伏し、まひろが訪れ、事切れるまでの一連のシーンは2日間で収録した。
「前日まで元気なシーンを撮影していたんですけど、(チーフ演出の)中島(由貴)監督から『川辺の誓い』(第42回、11月3日)のやつれ方が非常によかったので、“最後にもう少し頑張って”と割とサラッと(笑)オーダーがありまして。要するに1日で見た目の違いを出してほしい、ということなんですけど、僕も期待されると頑張っちゃうんですよね(笑)。普段から水はたくさん飲んでいるんですけど、その晩と翌日(撮影当日)の朝に水を抜いて。一晩で減量する時のボクサーの方と同じ方法なんですけど、もちろん体調には十分注意しながら、結果4キロ落ちました」
「生きることは、もう、よい」とも口にした道長。栄華を象徴する「望月の歌」も、今作は“新解釈”。人生への無常や虚しさを抱えながら詠んだ。
「道長さんは、ある地点から何かが嫌だったんじゃないかなと感じました。恵まれた藤原家に生まれ落ちたがゆえに、まひろとの運命も始まりましけど、一方で、それゆえの人間関係や政も付いて回って、やっぱり三郎のままでまひろと一緒にいられたらよかったという思いがずっと心の奥底にあった気がします。そう考えると、尊大や傲慢といった世間のイメージとは真逆の人物像になっていますよね。ただ、大石さんからは“最後まで美しくいて”とお願いされていたので、枯れていく美しさを心掛けました」
「今年の漢字」(1文字)を尋ねると「『藤』か『原』か『道』か『長』でしょうね(笑)。『道』にしておきましょうか、ちょっとダサいかもしれないですけど」と笑い飛ばしながら「これほど長く1つの役と向き合うのは初めてで、作品は終わった後も道長さんという人が“続いていく”といいなと、最初から思っていたんです。クランクアップした今、そのことをより実感していて、例えば、この座組の関係性だったり。もちろん、どのような作品でも経験したことが自分の中のグラウンドになっていくんですけど、同じチームで1年半築き上げてきたものは、やっぱり特別かなと思っています。そういう意味で言うと、『道』という字も悪くないかもしれません」と意味合いを明かした。
まさに“道長漬け”の1年半。最終回翌日(12月16日)は38歳の誕生日。不惑に向かう柄本の“役者道”が一層、期待される。