◇三菱電機杯第79回毎日甲子園ボウル 立命大45―35法大(2024年12月15日 甲子園球場)
最強オフェンスで王座奪回だ。立命大(関西1位)が6TDを奪い、法大(関東1位)に45―35で勝利。9年ぶり9度目の学生王者に輝いた。60ヤードの先制TDなど、214ヤードを走った立命大RB山嵜大央主将(4年)が甲子園ボウルMVPと年間最優秀選手に贈られるミルズ杯の2冠を獲得。新トーナメント元年の主役になった。
甲子園100周年にふさわしい新王者の誕生だ。聖地に響くカウントダウンが誇らしい。9年ぶりの学生日本一。立命大復活の先頭に立ち、山崎主将は感極まっていた。
「最高で、頭の中が真っ白。夢か現実か分からん感じです」
最強オフェンスの象徴が激闘の口火を切る。キックオフ直後のプレー。背番号22が抜け出し、タックルをスピンでかわして、サイドライン際を疾走する。強さ、速さ、巧さが凝縮された60ヤード先制TD。振り返る言葉は、山崎の信条だった。
「フットボールの神様が味方してくれました」
フィールド内外で全力を尽くし、周囲への感謝を忘れない者にしか結果は得られない。大産大付時代の恩師、山崎隆夫前監督の教えは、今や口癖となり、後輩に受け継がれる。
3点差に迫られた最終局面では、体も張った。敵陣28ヤードからの攻撃。出されたコールは、法大戦用に準備した「テキサス」だった。RB蓑部雄望(2年)と2人がダミーとなり、山嵜はブロッカーとして、勝負を決めたWR仙石大(3年)のTDをアシストした。「シグナルを見て、あ、このプレーが来たな、と。全部うまくいった」。自分のパフォーマンスだけに興味が向いてい3年生までの姿は消えていた。
昨年の関学大戦でいきなりファンブルし、悔し涙から始まったシーズン。主将に立候補し、投票数は4人で最下位だったのに、「熱さ」で説き伏せ、大役に就いた。高橋健太郎監督の配置転換を不服として3人が部を去った春を経て、秋のリーグ戦では関大に黒星を喫した。どんな困難に直面しても、最も早くグラウンドに現れ、汗を流す姿に対する選手の信頼は揺るがない。
「日本一になれたことで、自分たちが間違ってなかったことが証明できた。人生で最高の瞬間です」
関東と関西の聖域が撤廃された、新トーナメント元年。最強のチーム、そして最高の主将に、最後はフットボールの神様がほほ笑んだ。(堀田 和昭)