今年のウインターミーティングで最大のニュースは、期間初日の8日(日本時間9日)にもたらされた。FAの目玉だったフアン・ソト外野手が、メッツとプロスポーツ史上最大の15年総額7億6500万ドル(約1178億円)で合意。その瞬間、テキサス州ダラスの会場の片隅に設けられた記者ワークルームは騒然となり、中でもニューヨークの記者たちが慌てて速報を打つ姿が見られた。
「これほどの大金を得るだけの価値がある選手は、フィールド上だけではなくフィールド外での活躍も魅力的だ」
その翌日、まだ正式発表されていないためにソトに詳しい言及はできなかったが、メッツのカルロス・メンドサ監督の明るい表情も印象的だった。大谷翔平選手がドジャースと結んだ10年総額7億ドルを上回る超大型契約でスーパースターを手に入れ、2025年のメッツは最大級の注目チームになるのだろう。就任2年目のメンドサ監督も、これまで以上に大きな期待感の中でチームの指揮を執ることになる。
45歳のベネズエラ人、メンドサ監督はコミュニケーション能力に秀でた指揮官だ。英語、スペイン語を話すバイリンガルで、選手はもちろんスタッフ、メディアとも気軽に言葉を交わす。その笑顔と公平な姿勢には好感が持て、監督就任1年目にして前評判が低かったチームをナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)まで導いたことを喜んだ関係者は球界には多かったはずだ。他ならぬ松井秀喜氏もその1人だった。
「メッツの監督、私がヤンキースのマイナーでずっと一緒にやっていた人なんです。個人的には彼を応援したいんですよね。日本のファンの方に怒られるかもしれないですけど、(ドジャース対メッツのシリーズは)そういう気持ちで見ています」
引退後はヤンキースのGM特別アドバイザーとして活動した松井氏は、マイナーでの選手育成を手伝う過程でメンドサ氏と心を通わせたのだという。2人の関係はマイナーの守備インストラクターだったメンドサ氏が2018年以降、ヤンキースのコーチに昇格しても変わらなかった。
ドジャース対メッツのNLCS中。クラブハウスの通路で松井氏のエールを伝えた時のメンドサ監督の満面の笑みも忘れられない。
「それは本当にうれしいな!ヒデキの言葉は私にとって大きな意味があるんだ。ぜひとも彼によろしく伝えてほしい」。2025年のメッツへの期待度はすでに大きく、同時にメンドサ監督は昨季とは比べ物にならないほどのプレッシャーを背負うことを意味する。重圧の中でもその人間的魅力で新加入のソトとケミストリーを奏で、好結果を出せるかどうか。ヤンキースとの関係が深い松井氏も、ヤンキースとの対戦時以外は、メンドサ監督の健闘を願い続けているに違いない。(記者コラム・杉浦大介通信員)