【インタビュー】女優・米倉涼子(49)主演の映画「劇場版ドクターX」が6日に公開され、好調なスタートを切った。12年間続いたテレビ朝日の人気ドラマシリーズが完結する注目作。天才的な腕を持ちながら組織に属さず、病院をさすらい歩く主人公・大門未知子の誕生秘話が初めて明かされるほか、未知子が過去最大の危機に挑む。テレビ朝日取締役でエグゼクティブプロデューサーの内山聖子(さとこ)氏に12年間ともに歩んだ米倉との関係について聞いてみた。(鈴木 美香)
内山氏が米倉と最初に仕事をしたのは、2004年に放送された松本清張原作の連続ドラマ「黒革の手帖」。「最初に会った時、米倉さんは“私、女性のスタッフ苦手”と言ってとても無愛想でした(笑い)。後から聞いたら、風邪をひいていてとても体調が悪かったということでした。その時の役柄が悪女だったのでピッタリだと思ったことを鮮明に覚えています。そして、ふてぶてしくて悪い女を彼女は見事に演じました。そんな出会いから20年になりましたね」
今ではお酒を酌み交わし、温泉旅行にも行くほどの仲。「連続ドラマの主演とプロデューサーはガチで当たらなきゃいけなかったり、ある程度“裸”になってやり合っていかないといけないところがある。意見の違いもあって折り合わなくて、彼女が折れてくれたり、私があきらめたところもありました。そんな良い時、悪い時も含めて長い付き合いになりましたね」
“最悪の出会い”から2人はヒット作を連発。2008年「交渉人~THE NEGOTIATOR~」、10年「ナサケの女~国税局査察官~」と続き、12年からは「ドクターX」がスタートした。
「ドクターXは当時、白い巨塔がはやっていて、なんとなく米倉さんが白衣を着たら似合うだろうなと思ったのがスタートです。ただ、出世して白い巨塔を上っていくのが似合わないなって思って、むしろ偉い教授の回診の中をかき分けて崩していったり、人間の臓器とか体にしか興味がないような職人さんみたいなお医者さんだったら似合うかなと思いました。患者の立場からいえば、どんなに性格が悪くても、失敗しないお医者さんがいい。それを米倉さんが演じたら面白いだろうなっていうところから広がっていきました。そして脚本の中園ミホさんが“私、失敗しないので”という決めぜりふを書いてくれて、そんなお医者さんに会いたいなというのがドクターXになりました」
「ドクターX」が社会現象を生み出すような人気シリーズになっていく中で毎年のようにシリーズを撮り続けていった。その間、米倉には病気との闘いもあった。2019年に頭痛、めまい、まっすぐに歩けなくなるなどのさまざまな症状を伴う「低髄液圧症候群」を患っていることを公表し、22年には「急性腰痛症」および「仙腸関節障害」で運動機能の障害で苦しんだことも明かしていた。内山氏は「最初の出会いもそうですが、強く見えるけれど、裏側はとても繊細で弱い部分のある人。ずっと芸能界の真ん中を走って行くのは大変だろうなと思っていました。そんな中で自身の体調という困難に遭われて、主役という背負うものが大きいところにあって、強いイメージもあり、そのギャップに大変だろうなと思うこともありました。これでドクターXは完結で、待って下さる方は寂しいと言ってくださって、本当にありがたいと思っています。私としては年をとって、しわくちゃになってヒールも履いていない未知子に会ってみたかったけれど、やっぱり、皆さんが作ってくださった大門未知子のイメージはヒールを履いて強くて…という未知子だからどこかで終わらせないといけないと思っていました。ここまで見てくだった方にはこの映画でぜひ見届けていただきたいと思っています」
そして迎えた完結編。内山氏の言葉には米倉、そして未知子への感謝と優しさがこもっていた。