着実に成長を遂げた1年だった。入社6年目を迎えたNTT西日本・小泉航平捕手(24)。チーム内での存在感を高めたのは、都市対抗2回戦・日本製鉄石巻戦だった。
「浜崎(浩大)さんと組んで完封できた試合が一番自信になりました。すごく良い球を投げてくださった」
ようやく訪れたチャンスをものにした。同戦が都市対抗では初スタメン。相手打線の特徴を頭に叩き込み、試合当日の朝も田中孝宗バッテリーコーチの部屋を訪れ、直前まで対策を練り上げた。
分岐点となったのは初回。わずか12球で3者凡退に封じ、手応えをつかんだ。「初回の浜崎さんの球とバッターの反応を見たら、これはいける、と」。浜崎の宝刀・チェンジアップと直球を軸に組み立て、終わってみれば4安打完封。ベテラン右腕の快投を引き出した巧みなリードに「バッターにしっかりスイングさせなかった」とうなずいた。
大阪桐蔭では正捕手として、18年の甲子園大会で春夏連覇を達成。3年後でのプロ入りを目指し、19年に入社したが、先輩捕手の壁に阻まれ定位置獲得には至らなかった。目に見えて変化が生じたのは今季。河本泰浩監督は言う。
「自覚が芽生えてきて、ブルペンでの投手に対する声のかけ方も良くなった。若手のリーダー的な存在です」
ブルペンでの投球練習中から試合を想定した捕球をより一層、心がけた。打者目線での投手に対する助言を重視。「たとえシュート回転しても打者にとってはそれが嫌なこともあるので」。投手陣の考えを知るだけではなく、自分自身を知ってもらうことにも腐心した。元来、コミュニケーション能力の高さは誰もが認めるところ。心身ともに成長したことが出場機会の増加に繋がり、11月の新チーム発足からは副主将を任されることとなった。
「今までみたいに自分のことだけではダメですし、野手の方々とも、もっともっとコミュニケーションを深めて、守備でしっかり引っ張っていきたい。(主将の)水島(滉陽)とも協力しながら、日本一を目指します」
今秋の日本選手権では大阪桐蔭の1学年先輩でトヨタ自動車の福井章吾が、決勝を含む3試合で先発マスクをかぶり優勝へと導いた。「本当に尊敬しています」。憧れの先輩と同じステージに立つべく、まずは正捕手の座をつかみ取る。