今月9日に非公開で開催された現役ドラフトで巨人から阪神に移籍が決まった畠世周投手(30)が19日、兵庫県西宮市内の球団事務所で入団会見に臨み、打倒・巨人を誓った。猛虎にとっては今季のリーグ覇者が最大のライバル。V奪回を目指す一員となった右腕は「50試合以上登板」「勝ちパターン入り」「吉川斬り」を新たな目標に掲げた。藤川監督も中継ぎの一角として期待を寄せる新戦力が新天地でGキラーを目指す。
早くも虎党のハートをわしづかみにした。入団会見では購入したばかりの黄色のネクタイを着用。新天地での所信表明で畠は「ジャイアンツさんを倒さなければ優勝はない。それが恩返しだと思う。全力でぶつかっていきたい」と胸を張った。
古巣を“さん”付けで呼ぶあたりが、すでに敵だと意識している表れか。伝統の一戦の重要性は、巨人の一員だった時から感じていた。他球団に勝てなくても巨人に負けることだけは許してくれない関西の気質も知っている。「一番を挙げるなら吉川尚輝(と対戦したい)です。同期入団で自分より上の指名のドラフト1位なので、下克上じゃないですが、しっかり倒したい」。16年のドラフト2位右腕は、これまで切磋琢磨(せっさたくま)する関係だった吉川を宿敵に設定した。
その吉川は今季、全143試合に出場。二塁でゴールデングラブ賞を獲得するなどリーグ優勝に貢献した。今季、阪神戦の打率・264は規定打席に到達した選手の中では打率・290の丸に次いでチーム2位の好成績。“吉川封じ”がG倒にも結びつきそうだ。
「元々、先発もやっていて、長いイニングも投げられる。(阪神では)中継ぎなので勝ちパターンに入って、50試合登板を頑張っていきたい」
阪神は現役ドラフトでは大竹、漆原に続く3年連続の投手指名。嶌村聡球団本部長は「藤川監督ともすぐに畠くんで合致した。力はあるし、今年1試合登板に終わった悔しさがあるはず」と同制度の“勝ち組”を自負する。かつて小林繁が巨人から阪神に移籍してGキラーとして君臨したが、そのような大爆発を期待していた。(畑野 理之)
◇畠 世周(はたけ・せいしゅう)1994年(平6)5月31日生まれ、広島県出身の30歳。近大福山高から近大を経て16年ドラフト2位で巨人入り。1年目の17年に先発で6勝。21年途中から救援に回り、自己最多の52試合に登板。1メートル86、82キロ。右投げ左打ち。
≪畠に聞く≫
――今の心境は。
「まさか有名な阪神タイガースに指名していただけるとは思っていなかったので、びっくりしています」
――黄色のネクタイはチームカラーを意識した。
「急きょ買いに行きました。ネクタイを見た瞬間、これがいいと即決して選びました」
――阪神の現役ドラフトの選手では大竹、漆原が活躍。
「自分もその流れに乗ってやってやるぞという気持ちです」
――阪神ファンの印象は。
「一喜一憂じゃないですけど、自分たちと一緒に熱くなってくれたり、悲しんでくれる印象です」
――阪神投手の印象は。
「コントロールがいい西勇さんや村上選手に練習方法などを聞いてみたい」
――意気込みは。
「キャンプから良い状態で準備をして、新たなスタートなのでアピールしていきたい」
○…畠は近大の4学年下である佐藤輝の“援護弾”に期待を寄せた。移籍決定後に電話で会話したといい「“マジっすか”みたいな軽い感じだった」と笑い飛ばした。頼れる後輩は来季も打線の中軸を任される存在だけに先輩右腕は「一発というのは魅力あるので、その能力を自分が投げている試合で発揮してくれたらうれしい」と快音を思い描いた。
○…畠は17年のデビュー当時は主に先発で起用され、21年6月以降は予告先発投手の負傷による代替1試合を除けば全てリリーフ。救援83試合のうち、イニングをまたいだ登板が27度もあり、通算19勝12敗ながら救援に限ると7勝0敗で一度も黒星がついていない。