【激動2024芸能・社会(3)】昨年10月期の日本テレビドラマ「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さん(享年50)が1月末に急死し、日本中に大きな衝撃が走った。芦原さんの「漫画に忠実に」という思いが届かなかったことが明るみとなり、漫画や小説などを題材に実写化する、いわゆる「原作モノ」のドラマ化の在り方に厳しい視線が向けられることになった。
現在、民放ではゴールデン・プライム帯(午後7~11時)のドラマが16本ある。原作モノは昨年10月期は6本だったが、今年10月期は日テレ「放課後カルテ」とフジテレビ「嘘解きレトリック」の2本。広告代理店関係者は「問題が起きた後、テレビ局が原作モノの実写化に慎重になっている」と指摘。民放関係者によると、原作モノへの出演に難色を示す事務所もあり、キャスティングが難航した例もあったという。
そんな中、テレビ局は原作者・出版社側との向き合い方を見直している。漫画原作の「放課後カルテ」ではドラマ化に当たって、原作者がメインキャスト、脚本家、監督、プロデューサーと対面する場が設けられた。その席で漫画の世界観を丁寧に再現することが確認されたという。関係者は「これまで、そのような場が設けられたという話は聞いたことがない」と話した。TBS7月期の小説原作「笑うマトリョーシカ」などでは制作発表会見に原作者が登壇。同局関係者は「関係性を強めると同時に、制作の順調さをアピールする狙いがあったのでは」と話した。
出版関係者も「(脚本などで)変更点が発生した場合など、制作側から確認を取ってくれるケースが増えたように感じます」と変化を実感。「原作サイドも以前に比べると、しっかり意向を伝えるようにしています」とも明かし、より密な意思統一が図られるようになっている。
原作モノは視聴率や再生数が安定して見込めるのも事実。今期の原作モノ2作は、ドラマ全体の視聴率が芳しくない中、平均世帯視聴率6%台をキープ。ともに第1話のTVerでの再生回数が200万回を突破するなど、配信で大きく数字を伸ばした。キー局関係者は「やはり原作モノは根強い人気がある。なくなることはない」と語る。より丁寧な制作が進むことで、新たな話題作が生まれることに期待がかかる。(特別取材班)