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右腕切断の佐野慈紀さん 学童全国大会で魂のピッカリ投法 涙の球場復帰「この5年間ずっと入院生活で…」

スポニチアネックス 2024年12月21日 10時40分

 今年5月に感染症の悪化のため、右腕切断手術を受けた元プロ野球選手の佐野慈紀さん(56)が21日、神宮球場で行われた学童野球全国大会の始球式に登場。近鉄、中日などで活躍した現役当時とは異なる「左腕」からお馴染みの「ピッカリ投法」を披露した。

 佐野さん自らがシニアディレクターを務める学童軟式野球「くら寿司トーナメント2024 第18thポップアスリートカップ」。ファイナルトーナメントに集結した全国14チームの小学生を前に“復活”のマウンドに立った。

 優勝旗返還、選手宣誓など開会式が行われた後に登場した。投球前には「僕は腕を無くしましたけど、落ち込むことなく色々なことにチャレンジしていきたいと思っています。今日この場で左投げで始球式をします。その姿をみなさんへのエールという形で送りたいと思います。選手のみなさん、頑張ってください」とあいさつ。右腕を失うハンデを背負っても選手たちに諦めないでチャレンジすることの大事さを説いた。

 現在も入院生活を送る佐野さんは、病院から外出許可を得て開会式に参加。車椅子でマウンド付近に向かうと、マウンドの手前に立ち、グラブは右脇に挟んで左腕で帽子を落とすお馴染みの「ピッカリ投法」を術後初披露した。左腕からの投球はツーバウンドしたものの、しっかりと捕手のミットに収まり、選手や観客からは大きな拍手が沸き起こった。

 新調した金色のグラブには「かがや毛」と刺しゅう。投球を終えた佐野さんは「ちゃんと帽子飛んでた?(自己採点は)マイナス10点かな?」とコメント。「ストライクを投げることが目標だったので、全然できていなかったな」と悔しがりつつ、「やっぱりグラウンドに立つと、気持ちが大きく変わりますね」と充実感をにじませた。始球式に向けた練習については「しっかりトレーニングしていた。ステップ(トレーニング)もできるようになっていた。硬球で練習していてマウンドから届いていた」と説明した。

 ピッカリ投法については「まさかねえ、こんなに自分のライフワークになるとは思っていなかったですね(笑い) ただ、みなさんが笑顔になってくれればとうれしい」と話した。グラブの刺しゅうにちなみ、始球式は輝いていたがを問われると「ダメですねえ(笑い) 本当はもっと格好良く投げたかった。次はぜひ格好良く」と笑顔を見せた。

 しかし、最後にグラウンドに立ったのはいつ?の問いには涙ぐむ場面もあった。「この5年間ずっと入院生活なんで…」と話すと、しばらく考え込み、目は真っ赤に。その後「6年前に息子とキャッチボールして以来かな」と声を絞り出した。「(久しぶりのグラウンドは)やっぱり気持ち良かった。練習はずっと室内でやっていたので、全然雰囲気も違いますね」としみじみと話した。

 現在の状態については「抗生剤を飲んで、ちらして手術を回避できるかもしれないけど、透析もするのでうまくいかないこともあり、最悪は再手術の可能性もあります」と説明。「でも、このようなことが何度もあると思うのでいちいち落ち込んでいられない」ときっぱりと話した。また「この復活マウンドがきっかけで、もっとしっかり左で投げられるようになって、キャッチボールもできるようになって、目標はもう一度野球教室をやりたい。その思いで頑張ろうと思う」と言葉に力を込めた。

 今後のプランについては「ライフワークとしてが子供たちと接する活動をやりたい。もう少し動き回れるようになったら、何年もかけて全国を回りたい」と説明。子供たちに自身の姿をどう受け取ってほしいかとの質問には「僕の姿が、とかではなく、いくつになってもチャレンジできるんだ、野球って楽しいんだ、ということを感じてくれれば」と話した。さらに「これは第一歩なので、次はしっかりストライクを投げられるように頑張りたい」と締めた。

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