◇全国高校駅伝(2024年12月22日 たけびしスタジアム京都発着 女子5区間21・0975キロ)
女子800メートルの日本記録保持者で東大阪大敬愛の久保凛(2年)は、2区で12分47秒の区間賞を獲得した。本職はトラック競技ながら、初の都大路で16人抜きの快走を披露。6位入賞を果たしたチームの原動力となった。優勝は長野東。男子は佐久長聖が2年連続4度目の優勝を飾り、県勢のアベックVとなった。今回から男女ともに47都道府県代表と11地区代表の58校が出場。外国人留学生を起用できる区間が最短距離に限られるなど、規定が変更されている。
大きなストライドでピンクのユニホームがさっそうと都大路を駆け抜けた。21位でたすきを受け取った久保は1人、2人…と前を走る選手を次々と捉えた。力みない走りで、驚異の16人抜きを果たし、5位で仲間につないだ。NHKで解説を務めた小林祐梨子さんが須磨学園(兵庫)時代の06年にマークした日本人選手最高には12秒及ばなかったが、12分47秒で全体1位。昨年は大会直前の虫垂炎で欠場した無念さは、2年分の喜びに変わった。
「区間新を狙っていたんですけど…。区間賞を獲れたのと、いい形でたすきをつなげたので良かったと思う」
普段の主戦場は陸上のトラック競技で、最も得意とする距離は800メートルだ。大阪大会や近畿大会で走った1区(6キロ)ではなく、2区(4・0975キロ)で起用した狙いを、野口雅嗣監督は「外国人留学生みたいなタイムを持っている久保を、外国人選手が出てこない区間で起用できるのは大きい」と説明。前半で優位を保って粘る作戦で、昨年35位だったチームを6位入賞へと導いた。
練習休養日だった19日には、都内で日本陸連の表彰式があった。大会直前のため欠席する選択肢もあったが、野口監督から「みんなから応援してもらえるのは名誉なこと」と勧められて出席。U18日本記録を今シーズンだけで3度も更新したことなどが評価され新人賞に輝いたばかりか、この日の走りで全く影響がなかったことを証明した。沿道から響く声援には「何度も“凛ちゃん頑張れ”って聞こえて、力になりました」と満面の笑み。知名度も上昇し、いまや「サッカー日本代表MF久保建英のいとこ」という肩書が必要ないほどの注目ランナーに成長した。
16歳の逸材は、来年の世界陸上東京大会を見据えている。「持久力的な部分も、今後の800に生かして、来年は(駅伝で)もっと上の順位を目指したい」。古都で刻んだ足跡は、遠く世界にも続いている。 (石丸 泰士)
◇久保 凛(くぼ・りん)2008年(平20)1月20日生まれ、和歌山県串本町出身の16歳。小学1年からサッカーを始め、串本JFCでプレー。高学年から祖母の勧めで駅伝大会に出場し、区間賞を獲得。潮岬中から本格的に陸上を始め、23年に東大阪大敬愛高に入学。今年7月の記録会で、800メートル日本女子初の2分切りとなる1分59秒93をマーク。父・建二郎さんの兄が久保建英(Rソシエダード)の父。1メートル67。
≪出場校拡大、留学生の区間を限定≫今大会から出場校と外国人留学生の起用が変更になった。出場校は各都道府県代表47校に地区大会を勝ち上がった11校を加えた58校に拡大。久保を擁する東大阪大敬愛は近畿地区代表で出場権を得た。外国人留学生が走れる区間は最短の3キロ区間(男子は2区か5区、女子は3区か4区)に限定された。女子の3区は上位8人を留学生が占め、3人が従来の区間記録を上回った。男子2区も上位3人を占め、区間記録が塗り替えられた。