日本プロ野球名球会が新時代に突入したのが19年12月の総会。打者が2000安打、投手が200勝もしくは250セーブ以上に限定されていた会員資格に、「理事会推薦と会員4分の3以上の賛成」で入会できる「特例枠」を設けることが決議された。当時の古田敦也副理事長が具体例に挙げたのは名球会でも過去にない「二刀流」。エンゼルス・大谷(現ドジャース)だった。
「大谷君が1000安打、100勝した時に名球会としては価値がないのか?自分の2000本(安打)よりは凄い」。会員資格としては投打ともに半分の数字だが、「1000安打、100勝」という新たな見解を示した。メジャー2年目を終えた当時の大谷の成績は499安打&46勝だった。
あれから5年。今年の総会を取材すると、古田理事長の考えは“上方修正”されていた。現在、大谷は日米通算1174安打、80勝。古田理事長は「大谷選手は名球会に入る入らないとかそういうレベルの人じゃない。もっと上の上を目指している。価値ある数字を達成した選手には、仲間に入っていただきたい。我々はその気持ちなので、数字がいくつか具体的には決まっていない」とした。王顧問も「まだまだ現役バリバリ。変に(規定の数字を)下げたら彼に失礼」という考えだ。
名球会入りには「権威」だけではなく、野球の普及・振興に寄与するという側面がある。全国各地で野球教室を行うなど球界の裾野を広げる社会貢献活動を行っている。古田理事長は「1000安打、100勝」を「二刀流の選手が出てきた時の一つの目安」と補足した。特例枠での入会は「日米通算100勝、100ホールド、100セーブ」の上原浩治氏や、「日米通算61勝、164ホールド、245セーブ」の藤川球児氏(現阪神監督)がいる。
発足時の「昭和名球会」は、令和の時代に合った形に変化を遂げている。古田理事長、王顧問の二刀流に対する柔軟な考えから垣間見えた。(記者コラム・神田 佑)