満足の2文字とはほど遠い1年だった。社会人野球・ミキハウスの田浦由亮内野手(23)は九産大から入社1年目の今季、「1番・二塁」としてレギュラーを獲得。2大大会の同一年連続出場に貢献しただけでなく、9月には侍ジャパン代表としてU23W杯に出場。台湾でのウインターリーグにも12月3~16日までJABA選抜チームの一員として出場を果たしたが、自己評価は決して高くなかった。
「自分自身、まだまだレベルが低いと思った1年でした。全体的なことなんですが、特に走塁。自分の持ち味は足の速さなんですが、年間の盗塁数が足りなかったと感じています」
50メートル走は5秒6の俊足を誇るが、盗塁を試みようとしても思い切ったスタートを切ることができなかった。「バッテリーのレベルも上がりますし、相手の癖や、間合いの部分で盗むところまで至らなかった」。反省ばかりが口をついたが、JABA京都大会から1番に定着したことで公式戦を数多く経験。徐々に相手チームの情報も吸収していけたことで、来季は「足でチームを引っ張っていけるように」と意気込む。
田浦の思いとは裏腹に、首脳陣からは早々に信頼の2文字を勝ち取った。準決勝で敗退した4月上旬のJABA四国大会までは打線が低調。思い切りの良さを買われ、京都大会で1番に起用されると、3試合連続マルチ安打を放つなど13打数8安打、打率・615と打ちまくった。陣田匡人監督は「スピードもあるし、パンチ力もある。思った以上の結果を残してくれました」と高く評価。田浦もつかみ取ったチャンスを離さず、2大大会を含む主要公式戦21試合で69打数21安打、打率・304と期待に応え続けた。
2歳上の兄は、ソフトバンクの田浦文丸投手(25)。「小さい頃から一緒にやってきて、すごい選手だと思います」と尊敬する。頻繁に連絡を取り合うことはないが、今でも良き相談相手。顔を合わせた際には、体の使い方やトレーニングなどについて教わることは多い。2年目となる来季はプロ解禁となる勝負の1年。「まだまだ実力はありませんが、全てを出し切るつもりで、プロを目指してやっていきます」。走攻守の3拍子で大活躍を見せれば、自ずとチームの勝利に直結していく。その先に、憧れを抱く兄と同じステージが待っている。