背水の陣の思いで来季に挑む。ソフトバンクの勝連大稀内野手(23)は来季育成6年目を迎える。守備力を武器に2軍では高卒1年目から出場を重ねており、昨オフの自主トレで師事した今宮健太内野手(33)からは打力が上がれば支配下に昇格できるとお墨付きをもらった。今オフは新たに都内で動作解析に取り組む予定。3桁背番号を卒業すると燃えている。
正直、クビも覚悟していた。「今年がラストだと思っていた」。だからこそ、勝連の来季6年目に懸ける思いは強い。今秋キャンプ終了後は筑後ファーム施設でバットを振る日々を過ごした。「この世界は結果。来年は大きく変化したい」と強い覚悟でいる。
20年に高卒育成選手として入団し、打撃がずっと課題だった。今季はウエスタン・リーグ45試合に出場して打率・241。支配下登録争いの一角にはいたが、7月に同じ内野手のダウンズが入団したこともあり夢はかなわなかった。「爆発力がないと支配下にはなれない。3割近くまで持っていかないと」。もっと打力を上げないと支配下にはなれないと自覚している。
守備は高い能力も備えている。入団時にはスカウトから「なかなかできないグラブさばき」と華麗なハンドワークを褒められた。しかし、確実性は乏しかった。「アクロバティックなプレーはできたけど、正確性がなかった」。当時、2軍内野守備走塁コーチだった松山2軍監督から「ノリで守っている」と厳しい言葉を受け、基礎練習を反復して安定感が増した。今季は遊撃で23試合に出場して3失策、二塁では14試合で1失策、三塁では11試合で無失策だった。
師匠と仰いでいる今宮も守備を称えるほどだ。昨オフまで自主トレで師事し、ゴールデングラブ賞に5度輝いた名手から「俺のところに来ても教えることはない。自信を持ってやれ」と最上級の言葉を受けた。さらに「打てば(支配下に)上がれる。打て。ほかのところに行ってこい」とハッパをかけられた。
このオフはトップ選手にデータ解析サービスなどを提供する「ネクストベース」(東京都)でバッティングを再構築する。「どこを鍛えたらいいとか分かるみたいです。学んだことを筑後でやっていきます」。“かっちゃん”の愛称でファンから愛される勝連。課題の打撃を磨いて道を切り開く。
(杉浦 友樹)
◇勝連 大稀(かつれん・はるき)2001年(平13)4月30日生まれ、沖縄県出身の23歳。興南では2年夏の甲子園に出場。1回戦の土浦日大戦では5打数3安打1打点の活躍で勝利に貢献した。19年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団。趣味は温泉巡り、寝ること。背番号130。1メートル75、70キロ。右投げ左打ち。
○…勝連の興南(沖縄)の同級生はオリックス・宮城。プロ入り当時から「1軍で戦いたい」と言い続けてきた。宮城は昨年のWBCで侍ジャパンの世界一に貢献し、今年は開幕投手を務めて7勝を挙げるなど、通算42勝をマーク。仲良しで今オフも沖縄に帰省した際に会う予定だが「いい最終目標でありライバル」と負けられない思いは強い。