阪神の佐藤輝明内野手(25)が23日、ポスティングシステムを使った将来的な大リーグ移籍の希望を、球団に初めて伝えたことを明かした。兵庫県西宮市の球団事務所で契約交渉に臨んで現状維持の1億5000万円で更改し、その席上で直談判。明確な挑戦時期は明かさず、目標実現のために来季は優勝と打点にこだわる決意を示した。同制度を利用したメジャー挑戦願望を今オフに表明するのは、才木に続き2人目。阪神はこの日で全選手の契約更改を終えた。
ずっと抱いていた夢をついに口にした。佐藤輝が将来的なメジャー挑戦を球団に直訴した。現状維持の1億5000万円でサインした契約更改の席上で、ポスティングシステム利用による将来的な挑戦希望を、伝えた。
「お願いはしています。球団も前向きにしっかり考えてくれると思う。そういういい話し合いはできました」
1年目から主軸級の活躍をしてきた。昨季は18年ぶりリーグ制覇と38年ぶり日本一に貢献。今季は16本塁打と70打点が昨季を下回ったとはいえ、自己ベストの打率・268をマークして優勝争いの一翼を担った。戦力になってきた自負があるからこそ「しっかり伝えたのは今年が初めて」と行動に移した。
「自分の中で思いがしっかり固まったというか。明確にそういう目標を立てたいと思ったので、今回伝えさせてもらった。4年間やってきて、だんだん(思いが)積み重なってきたものかなと思う」
現行制度では海外FA権取得には9年かかるため、最短でも29年オフになる。近大時代から憧れを公言し、昨オフにはメジャーリーガーも多く通う米国の野球研究・トレーニング施設「ドライブライン」で打撃の研さんを積んだ25歳のスラッガーにすれば、31歳シーズンでの挑戦まで待てないのが本音だ。あくまでポスティングシステムでの渡米が理想。球団野手のメジャー挑戦は00年オフに海外FA権でメッツに入団した新庄剛志を最後に出ておらず、ポスティングシステム利用が認められれば初になる。
ただし、肝心の時期については「まだ話し合いで、というところはありますけど」と言葉を濁した。現状では球団が首を縦に振ってくれないことを、承知しているからだ。
「そこ(メジャー)を目指すというよりは本当に、まず優勝したいというのが一番上にある。そのために頑張りたい」
快く送り出してもらうには、優勝に貢献し続けることが大前提。手始めに来季は今季同様に「3割」「30本」「100打点」を目指す。特に「もっともっと打点を稼ぎたい」と走者を還すことを自分に課した。あと90打点で球団生え抜き初の5年目での通算400打点到達。シーズン100打点なら球団生え抜きでは05年今岡誠以来の大台になる。5年目の25年は、夢に向けた一歩になる。(倉世古 洋平)
◯…才木に続いて佐藤輝も契約更改の席でポスティングシステム利用による将来的なメジャー挑戦を直訴したことを受け、嶌村聡球団本部長は「直接は(交渉に)入っていないが、担当から報告は受けた」と語った上で「FAは選手側の権利だが、ポスティングは球団の権利というのが大前提。でも、そういう風潮があるのは事実だし、向かっていきたい選手の気持ちを止める権利はない。チームが優勝を目指す中でファンやスポンサーの意見やチーム編成などを総合的に判断することになる」と時間と状況、貢献度が今後の判断材料になると示唆した。
○…阪神からは、これまで5人がメジャーに移籍。野手では00年オフにFAで移籍した新庄剛志だけで、ポスティングシステムを利用すればチーム野手初になる。なお今オフ、球団は青柳のポスティングでのメジャー移籍を容認。才木も契約更改で近年中のポスティングによるメジャー挑戦の考えを球団に直訴したことを表明している。
○…佐藤輝は新人だった21年から今季までの4シーズンすべてでFA権の取得基準となる1軍登録日数145日=1年をクリアしており、海外FA権取得の9年を満たすのは最短5シーズンで29年。この場合、佐藤輝は31歳シーズンからのメジャー挑戦になる。