マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(51)が23日放送のMBS/TBS系のドキュメンタリー番組「情熱大陸」に出演。現在のメジャーリーグの野球に危機感を訴えた。
番組ではイチロー氏と巨人、ヤンキースでプレーした松井秀喜氏との会食に密着。2人が活躍した2000年代初頭からメジャーリーグの野球が大きく変わってきたことに話題が及び、松井氏が「今のメジャーの試合見てて、ストレスたまらないですか?」と質問。イチロー氏は「たまる、たまる。めちゃめちゃたまるよ!退屈な野球」と賛同した。
松井氏が「打順の意味とか、そういうのがなんか薄れちゃってますよね」と語ると、イチロー氏も「それぞれの役割みたいなことがまったくないもんね」とうなずいた。
メジャーリーグの野球が大きく変わったきっかけとして野球における統計学「セイバーメトリクス」があり、あらゆる指標でデータを集め分析する。さらに軍事レーダー技術を転用した「スタッドキャスト」と呼ばれるシステムの導入により、ボールの回転数や打球角度、選手の走った距離などあらゆるデータが計測できるため、データがより重視されるようになった。
イチロー氏が「勉強ができる人たちにねぇ」と過度なデータ重視の現代野球に危機感を唱えると、松井氏も「野球がそっちに支配されちゃってる」と同調。
さらに、イチロー氏は「目で見える情報をインプットされて“そうなのか”って、ある意味では洗脳されてしまってる」と続け「でも、じゃあ選手の気持ち、メンタルはまったくデータには反映されない。それを一緒くたにされてしまうので…」と指摘。「目で見えない大事なこと、いっぱいあるのになって。皆そこ(データ重視)でやるから、そこ勝負になっちゃってるからね」とデータにばかり頼り、自分の感覚や感性などを大事にしていないと嘆いた。
そして「昔は日米野球に来た選手とかは“そんなとこまで打っちゃうの?”って、個性があるように見えた」と振り返り「長いものに巻かれる文化は日本にあるじゃない?アメリカは個人を尊重する文化かなと思ったら皆、巻かれていく」とアメリカの野球も日本同様、長いものに巻かれているとした。
その上で「危ないよね。この流れは。怖いのは日本は何年か遅れでそれを追っていくので、それまた怖い」と日本の野球もメジャーリーグを追い、過度なデータ重視の野球になるのではと危惧した。
イチロー氏はデータを全否定しているわけでなく「すべてデータで管理している。それを追及していくんだ。必要な時にそれはONにすればいいけど、常にある状態。そこに見えるところにあるので頭を全然使ってない。まさしくMLBの野球がそうなっている」とデータも使いながら自分の頭で考えることや感じたことも大切にすべきではと訴え、データ重視の野球で失ったものとして「感性ですよ。だって目で見えてるものしか信じられなくなる」ときっぱり。「何マイル以上なら、何パーセントの割合でヒットが出る。何マイル以下なら、こうなる。さらに下ならこうなる。そんなん技術あるじゃないですか。そうじゃない技術がある。とにかく見えるものしか評価しないというのは、危険ですね」と持論を口にした。