2001年に始まったシンガーソングライターの小田和正(77)によるTBSの音楽番組「クリスマスの約束」(1部=後10・00、2部=後11・56)が24日に放送され、24年の歴史に幕を閉じた。
2001年から始まり、今ではクリスマスの風物詩となった小田をメインアーティストに「アーティストがお互い認め合えるような番組」を目指したスペシャル音楽特番。17年まで毎年クリスマスの時期に多くのゲストを迎え放送され、18年は小田のスケジュールの関係、20年は新型コロナウイルス感染拡大の影響、22・23年は小田のスケジュールの関係で開催されず、今回で節目の20回目となった。
「大事な話があるのでこれを読まさせていただきます」
小田はステージで1枚の紙を取り出した。MCを務める時、いつも準備するメモに、この日は特別な思いをつづった。
「『クリスマスの約束』は一度きりで終わるはずの番組でした。それが懸命に戦ってくれたスタッフたち、音楽を愛するアーティストたち、そして、なんと言っても放送を楽しみにしてくれていた視聴者の皆さんに支えられて20回も続けてこられたんです。くじけそうな時もたくさんありましたが、今振り返ればすべてが楽しい思い出です。クリスマスの約束をやらなければ出会うはずのなかった、たくさんのアーティストたち。そして、一緒に番組を作ってくれたアーティストの仲間たちがいたから、目指す番組ができたんです。僕の音楽人生の中のかけがえのない時間でした。“続けてきて良かった”。今、心からそう思います。そして、“クリスマスの約束楽しみにしています”と言ってもらえるうちに番組を終えることにしました。寂しいけれど、それがいいと本当に思ったんです。みんな、本当にありがとう。どうもありがとうございました」と今回で“クリ約”の歴史に幕を閉じることを発表した。
突然の“ラストクリスマスの約束”宣言に、史上最多20万通の応募の中から選ばれた1000人のファンは騒然。多くのファンの目から涙がこぼれ落ちた。
そんな客席を見た小田は「ここで皆さんがどんな反応があるのか、ずっーと考えていましたけれども…泣かないでください。“楽しく”と約束しましたから、楽しく楽しくやっていきたいと思います」と優しく語り掛けた。
楽しく終わろう。小田は、豪華アーティストとのコラボ映像の数々など、これまでのアーカイブ映像をファンとともに見て「感動しましたね」と万感の笑顔。「映像を見て、当たり前だけど手抜きがないなっていう、誇れることがたくさんあって…。頑張ってきて良かったな。幸せに思っています、どうもありがとうございました」と感謝の思いを伝え、頭を下げた。
最後のクリスマスの約束では、01年の第1回の最初に歌った「言葉にできない」をはじめ、「たしかなこと」「この日のこと」など自身の名曲を披露。「緊張してしまって…みんなに歌ってもらえると助かります」とファンに呼び掛ける場面もあった。そして「キラキラ」「ラブ・ストーリーは突然に」では観客も総立ちで手拍子。会場のボルテージは最高潮となった。
「小田さんありがとう~!」。ファンからの感謝の言葉と、鳴り止まない拍手。最後には、ゲスト1人ずつと熱い抱擁を交わし「幸せです。楽しかった。みんなありがとう~っ!」。苦難の始まりから24年…節目の20回、笑顔で「クリスマスの約束」の幕を閉じた。
<クリスマスの約束>2001年に「全く新しい形の音楽番組を作りたい」とTBSが小田に持ちかけ、小田をメインアーティストに「アーティストがお互い認め合えるような番組」を目指し企画・制作された音楽番組。制作に当たり、小田がSMAP、福山雅治、桑田佳祐(サザンオールスターズ)、松任谷由実、宇多田ヒカル、桜井和寿(Mr.Children)、そして長年「犬猿の仲」と言われた山下達郎の7組に直筆で出演依頼の手紙を書いた。だが、さまざまな理由でその全てから出演を辞退され、納得できないスタッフを小田が説き伏せる形で単独ライブ形式の公開収録を行ったのが始まり。苦難のスタートとなったが、03年に開始3年目にして初のゲストを迎えた(ゆず、財津和夫、根本要、桜井和寿)。それ以降は豪華アーティストたちと共演。2009年には総勢21組のアーティストによって、22曲の楽曲を22分50秒の大メドレーとして熱唱。小田の思いが詰まった番組の象徴と言える「合唱」が多くの反響を呼んだ。コンセプトは「アーティスト同士がお互いを認め、愛し、尊敬すること」。番組の題字は小田の直筆となっている。