阪神が来春の甲子園でのオープン戦で、コロナ禍以降禁止していたジェット風船の限定解禁を検討していることが24日、分かった。3月上旬に5試合組まれているゲームのいずれかで、2019年以来6年ぶりとなる風物詩が復活する見込み。先行する他球団が導入する専用ポンプを用いて膨らませるタイプで、衛生面、環境面に配慮する。
音を鳴らして勢いよく飛び、球場全体を黄色く染める。虎党の応援グッズの主役とも言うべきジェット風船が、来春、甲子園に戻ってきそうだ。阪神が来年3月のオープン戦での限定解禁に向けて最終調整をしていることが、阪急阪神ホールディングス関係者への取材で分かった。
対象は、同月4日の中日戦から同球場で組まれた5試合のいずれか。その最後のゲームである9日の巨人との伝統の一戦が本命とみられる。正式に決定すれば、2019年9月30日中日戦以来6年ぶりに、ラッキーセブンや勝利の瞬間ににぎやかな光景が訪れる。
同関係者は「衛生面や環境面の問題を一定程度クリアできることが背景にあると聞いている」と明かす。口で空気を入れる従来のタイプではなく、近年の主流である専用ポンプを使用して膨らませる形状を導入する。これにより、飛沫(ひまつ)などの衛生面の問題に対応。また、素材やゴミの受け入れ態勢などが改善したことも、復活を後押ししているとみられる。
昨年6月に広島が再開し、今季もDeNAなどが解禁に踏み切った。阪神は先行する球団が使用する風船、運営方法などを研究。解禁の態勢を整えた。シーズン中でも実施するかどうかは、今後の検討材料になる。
日本球界に広く浸透するジェット風船を使用した応援は、甲子園が発祥とされる。1978年5月13日の広島戦で、広島選手が本塁打を放った際に上がったといわれている。以後、阪神の風物詩として定着。その一方で、20年のコロナ禍以前から、球団には否定的な意見が少なからず届いていた。唾液の飛散、落下した風船の衣服や身体への付着、音、さらには、大量に発生する数万に及ぶゴミ、風によって球場外へ飛び出ることも懸案事項になっていた。持続可能な社会の実現「SDGs」の観点から、近年はペンライトでの応援に力を入れてきた。
長年親しまれてきた応援方法の復活は、虎党にとって朗報。藤川監督の就任1年目であり、球団創設90周年の節目の年に、オープン戦限定とはいえ、ファンの楽しみが一つ増えることになりそうだ。
▽ジェット風船 元祖は広島ファンで、市販の風船を甲子園球場に持ち込んで飛ばしたのが始まりとされる。80年代には阪神をはじめ他球団にも応援グッズとして浸透。のちに甲子園球場でも高校野球の記念グッズなどを手がけるシャープ産業から販売されるようになった。09年5月に新型インフルエンザの国内初感染が確認された際は、販売が中止され使用禁止となるなど、今回のコロナ禍以前にも規制の対象となった時期があった。
○…日本球界で先陣を切ったのは広島で、昨年6月に実施した。同年7月にはソフトバンクも続いた。今季はDeNA、西武、楽天も7回の攻撃前と勝利時に解禁している。どの球団も口で膨らます行為を禁じ、専用のポンプを使う仕様に限って認めている。また、巨人、ヤクルトは、コロナ禍以前から本拠地での使用を禁止している。