阪神が、来年3月に開場予定の2軍新施設「ゼロカーボンベースボールパーク」(兵庫県尼崎市)に、最新の動作解析機器「マーカーレス・モーションキャプチャーシステム」を導入することが25日、分かった。施設内にある「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」に設置する数台のカメラで、試合中のプレーから投球、打撃フォームを解析する画期的なシステム。ドジャース・大谷翔平投手(30)もスイングチェックに利用するMLB標準装置で、育成の虎を加速させる。
「マーカーレス・モーションキャプチャーシステム」は、「マーカーレス」の名前の通り「マークを付けない」のが最大の特徴だ。阪神の2軍本拠地「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」に複数台設置される高精度カメラが、1スイング、1球ごとのフォームを追跡。「体の動きのエックス線」ともいえる動作解析(モーション・キャプチャー)で、例えば体の開きの原因、エネルギーの大きさ、伝達効率、活用できていない部位などが分かる。
従来のように体に専用のマーカーを着ける必要がなく、球団関係者は「“今から測ります”という計測ありきのフォームではなく、試合中の生の動きという情報を得られる点がメリット」と効果をうたった。技術が未熟な若虎は、正しい体の使い方を習得できる。また、故障防止にも役立てられる。
阪神は、このシステムの最大手・キナトラックス社製を日本で初めて採用する。同社を傘下に持つソニー社の広報部は「キナトラックスはMLBの大半の球団で使用され、日本では、今シーズンまでまだ事例がない」と説明する。米大リーグで標準装備され、ドジャースの大谷もスイングチェックに活用する。チームの世界一と大谷の「50―50」の土台をつくった最先端機器が虎の2軍を支える形だ。
来季、ファームでは試合中のタブレット端末の使用が解禁される。大谷のように、ベンチでフォームをチェックし、即座の改善につなげられる可能性がある。また、1軍選手にも利点があり、調整出場した2軍戦で技術的な問題点を洗い出せる。多種多様な選手のフォームをデータ化することで、将来的に個人に適したフォームの指導方法確立が期待される。最新システムを宝の持ち腐れにしないために、選手に正しくフィードバックできるアナリストなどの専門家の存在と、コーチの勉強が求められる。
阪神は、16年から生え抜き選手中心で育成重視のチームづくりを進めてきた。その結果、6年連続Aクラスと23年のリーグ制覇と日本一につながった。ファームには下村、椎葉、井坪、山田ら楽しみな素材がひしめく。球団創設90周年を迎える25年シーズン、メジャー御用達の最新設備で育成の虎を加速させる。
○…阪神は18年に、甲子園球場と2軍本拠地の鳴尾浜球場に高性能弾道測定器「トラックマン」を導入した。打球角度、正確な飛距離、投球の速度、回転数、変化球の曲がり幅などが測定できる。23年には、甲子園球場に米大リーグ全球団が使用する最新の動作解析システム「ホークアイ」を設置。トラックマンと同様の投手、打者のデータに加え、打球方向や傾向を把握できることで、打者に応じた守備シフトを敷くことが可能になった。