【記者の目】阿部巨人は、移籍先が見つからなかった大投手を救っただけではない。田中将は楽天を去る理由として「居場所がない」と言ったが、巨人なら「居場所がある」に変わるはずだ。実績のある選手が多いだけでなく、首脳陣にも元スター選手がそろい、「孤高の存在」にはならないからだ。
8年ぶりに復帰した楽天ではほとんどが後輩となり、気心の知れた首脳陣も減った。フロントも、かつてポスティングによるメジャー移籍に尽力した立花陽三元球団社長はいない。意思疎通がうまく図れない中で、3年連続の大幅減俸。結果を残せなかったから仕方ないが、田中将に「期待されていない」と感じさせたのも事実だ。
昨オフは安楽のパワハラ問題が起こり、田中将の関与が一部報道で疑われた。先輩として見過ごしてしまった責任はあっても、それはチーム全体にも言えること。球団は「他の選手の事象は出てきていない」と発表したが、疑惑は晴れることなく今でも誹謗(ひぼう)中傷を受けている。この際、関与を否定するようなアクションを起こしていれば、田中将は救われただろう。これもコミュニケーション不足が要因と言える。
もちろん、居場所は自ら探すものだが、誰かの手助けが必要な時もある。巨人には楽天で新人の時から3年目までヘッドコーチだった橋上作戦戦略コーチがいる。阿部監督、杉内、内海両投手コーチらはWBCでともに戦った先輩たちだ。幼なじみの坂本もおり、田中将に意見を言えて、助言もできる存在はいくらでもいる。だから、「居場所」はある。(野球担当部長・飯塚 荒太)