楽天を自由契約となり、巨人に移籍した田中将大投手(36)が25日、都内のホテルで入団会見を行った。年俸1億6000万円プラス出来高払いの1年契約で、背番号は斎藤雅樹らかつてのエースもつけた「11」に決定した。
なぜ、巨人は田中将を獲得したのか。楽天、ヤンキースで日米通算197勝を積み上げてきたが、今季は1試合の登板で0勝。復活を信じたことはもちろん、発展途上の若手が多い投手陣の“手本”となることがチームにプラスになると判断したからだ。吉村禎章編成本部長は「実績だけじゃなく人柄、いろいろなことに接する態度も、いい報告も受けて」と経緯を説明した。
田中将とともに日の丸を背負って戦ったこともある阿部監督は、11年前の姿が忘れられない。13年に楽天と覇権を争った日本シリーズで3勝3敗で迎えた運命の第7戦。楽天のエースだった田中将は前日に160球を投げ抜いていたが、最終回に連投のマウンドへ。球団創設初の日本一に導いた。阿部監督は「チームが勝つために己を犠牲にして最後に登板して。熱い気持ちを持っている投手だし、今の若い選手が足りていないところ。そういうのも見て、学んで、継承していってもらいたいがために、獲得に乗り出していただくようにお願いしました」と明かした。
チームは今季、4年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、今季15勝を挙げ最多勝のタイトルを獲得した菅野がオリオールズに移籍。エース・戸郷や山崎伊、井上らローテーションには若い投手がそろう。田中将は投手最年長として、今季の菅野がそうだったように、姿勢を後輩に示す役割を担える。阿部監督は「投げてる姿だったり、そういうのを見てくれれば若い選手が何か感じるはず。それだけで十分です」と相乗効果に期待を寄せる。
田中将への期待は条件にも表れている。楽天が提示した年俸は出来高払いを除けばベースが5000万円以下とみられ、巨人は大幅に上回る1億6000万円。全盛期のようなパフォーマンスはなくても、数々の経験を積んできた右腕ならグラウンド内外で存在を示してくれる。阿部監督もフロントもそう信じて、獲得が決まった。(川島 毅洋)