巨人から海外FA権を行使した菅野が、オリオールズと1年契約を結んだ。来季は新天地でどんな投球を見せてくれるか、楽しみが増えた。
かつて、日本人投手がメジャーに挑戦する際、固いマウンド、滑りやすいボールへの対応が成功への鍵とされていた。だが、今は日本の球場もマウンドは固くなったし、侍ジャパンで国際試合を多く経験する投手が増えたことで、その議論は減っているように感じる。
菅野が米国で成功するための懸念材料は、捕手とのコンビネーションだけだと思う。球種が多いだけでなく、データだけに頼らない感性も菅野の武器。15勝を挙げ最多勝のタイトルを獲得した今季も、打者を見ながら組み立てている姿が印象深い。
菅野は今季、同い年の小林と全試合でバッテリーを組んだ。「僕はここでこの球を投げるのは根拠があって選択している。でも、誠司も打者の反応とか見て、根拠があってサインを出している。じゃあ、ここはそうしようってなるときもあります」と、あうんの呼吸で勝利を積み重ねてきた。信頼関係がないとできなかった配球もあっただろう。
今季は156回2/3を投げ、与四球はわずかに16個だけ。制球力は年齢を重ねても衰えることはない。投げたいコースに正確に投げる技術は、日本ではトップクラス。以前の菅野は厳しいゾーンに投げ分けられるからこそ球数を要したことが多かったが、今季は大胆にゾーン内に投げ込んで、圧倒的な数字を残してきた。
お互いの意図を理解したバッテリーならピッチクロックにも対応できるが、意思の疎通がうまくできなければ、高いパフォーマンスは発揮することは難しい。米国で活躍するためには、相棒とシーズン前からどれだけ信頼関係を築けるかが鍵だと思っている。キャンプのブルペンで球を受ければ、どれだけ正確に投げてくれる投手かはすぐに分かるはずだから。(記者コラム・川島 毅洋)