◇第101回東京箱根間往復大学駅伝・復路(2025年1月3日 神奈川・箱根町~東京・大手町の5区間109・6キロ)
【金哲彦氏 解説】 青学大の6区・野村の区間新はまさに異次元の記録だ。最初の上りは抑え気味に入り、下りに入った途端に急加速した。
下りを走る時に一番大切なことはまずストライドを大きくすること。そして絶対にブレーキをかけないこと。下りでブレーキをかけると一気に足にダメージが来る。ストライドを大きくしてもブレーキがかからないように接地時間を短くしてすぐ次の足を出す。しかも野村は体幹が強いので、急なヘアピンカーブでも常に最短距離のインコースを走っていた。いくら下りとはいえ、普通は1キロ2分35~40秒ぐらいが常識。1キロ2分20秒台は私も今まで見たことがないスピード感で、本人が言う通り1年間ずっと56分台を出すために徹底的にテクニックを磨いてきたに違いない。
青学大の強さはまさにそれで、おそらく1年間の練習全てが箱根の長い距離や上り下りなど、コースの特徴に合わせて組み立てられているのだろう。何一つロスのない野村の山下りを見ればそれがよく分かる。
選手層の厚さから来る部内競争の激しさ、優勝しても「区間新が出せなかった」と悔しがる意識の高さ、そして箱根最優先の長期練習が、見事に11年間で8回優勝という常勝チームをつくり上げた。 (駅伝マラソン解説者)