連覇&日本一を目指す2025年。ソフトバンク1軍から消えるものがある。技術指導する打撃コーチだ。
「打撃コーチは打撃指導しないスタートをさせる。仕事は練習メニューの作成と打順の提案、対戦攻略法、ベンチのムードづくり、ネクストから向かう選手への精神的アプローチ。上(1軍)にきてバッティングフォームに悩んでいる人は、1軍にはいらないです」
小久保監督は新春インタビューでそう、明快に理由を語った。
技術は最先端テクノロジーを駆使した「動作解析」を行うR&D部門がデータを基に担う。秋季キャンプも打者は宮崎には行かず、福岡県筑後市のファーム施設にある全投手の球威や軌道を再現するピッチングマシンで打ち込んだ。“人”の介在をなるべく減らすことで指導法は統一されて、“人”が入れ替わっても方針は残る。
これをどう捉えるか、意見は二分されるかもしれない。昨季は91勝で独走優勝した。一般的に大切なのは“継続”で、恐れるべきは“変化”となる。そこにあえてメスを入れた。挑戦は失敗に終わるかもしれない。ただ、球団が求めるのは飽くなき“進化”である。元日にチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に就任した城島健司氏は「ダメだったら91勝した年に戻って未来に“打撃コーチは人間がすべき”と伝えればいい」と力説する。
95年に就任した王貞治監督が30年以上、球団に関わり築き上げたのが「王イズム」だ。城島CBOの仕事の一つはその歴史を後世に語り継ぐこと。現在の成功は山ほどの失敗の上に成り立っている。球界のトップランナーであるチームは、餌を求めて天敵がいるかもしれない海へ最初に飛び込む“ファーストペンギン”のようにまた、挑戦を始める。
「王の30年」という礎があるからこそ、失敗を恐れずに戦える。「失われた30年」といわれ、日本はいつしか極端に失敗を恐れるようになってしまったように思う。ダメだったらどうする?といった議論は一度、脇に置いてみよう。新年に城島CBOの言葉を聞いて自分自身にもそう、言い聞かせてみた。 (福浦 健太郎)