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腎臓に仁の心を 日本人の成人8人に1人が慢性腎臓病 一度衰えた機能は元に戻らない沈黙の臓器

スポニチアネックス 2025年1月10日 5時3分

 【生島ヒロシ オヤジの処方箋】芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(74)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。2025年の初回は、体のろ過装置の役割がある「腎臓」を取り上げます。

 あけましておめでとうございます、生島ヒロシです。今年も医療・健康情報をドシドシお届けしていきますよ。新年の1回目は、腎臓について考えてみましょう。腎臓は肝臓、膵臓(すいぞう)と並んで“沈黙の臓器”として、病気の自覚症状が出にくいと言われています。どれも大切な臓器ですが、腎臓を悪くすると人工透析が必要になり、QOL(生活の質)に影響を与えます。人生100年時代、特にいたわりたい臓器です。腎臓病に関する著書が多数ある、仙台市の堀田修クリニック院長、堀田修先生に教えていただきましょう。

 堀田先生、今年もよろしくお願いいたします。基本的なことですが、腎臓はどんな働きをするんですか?

 「腎臓は左右に1個ずつある、そら豆形でこぶし大の臓器です。体内の老廃物を排出する尿の元をつくる、ナトリウムやカリウムなどの電解質を体内に保つ、赤血球をつくるためのホルモンを出す、骨を強くするビタミンDを活性化させる、などの機能があります」

 体中を巡った血液をろ過するんですね。

 「糸球体と呼ばれる血管の塊でろ過された尿の元、原尿は1日150リットルになり、その99%が再吸収され、最終的に1.5リットルが膀胱(ぼうこう)にたまって尿になります」

 150リットルですか!私たちは腎臓を酷使してるんですね。

 「糸球体は腎臓1個に約100万個あり、10歳を過ぎると、10年ごとに約6万個なくなっていくと報告されています。また、糸球体は一度機能が衰えると、元には戻りません」

 それは大変。酷使し続けると、どんな病気になるんですか?

 「腎臓の働きが60%以下になると慢性腎臓病(CKD)になります。日本の成人8人に1人、約1330万人が慢性腎臓病と言われていて、65歳以上の男性では約30%、女性では約40%に上ります。“沈黙の臓器”ですから働きが悪くなっても自覚症状がほぼありません。健康診断で“尿タンパク”や“尿潜血”が陽性になったら、糸球体が傷んでいる可能性があります。腎臓の働きについては血液検査の“血清クレアチニン”“eGFR”という項目の数値が基準値を超えていないかに注目してください。クレアチニンは腎臓で再吸収されず、そのまま尿に排せつされるため、腎機能が低下すると血清クレアチニン値が高くなります。eGFRは、1分間でどれだけの血液をろ過し、尿をつくれるかの能力を示します。基準を下回っていたら、腎臓内科の受診をお勧めします」

 慢性腎臓病になったら、どうすればいいですか?

 「糸球体は血管の塊ですから、血管を傷める高血圧には注意し、糖尿病の方は血糖値をしっかりコントロールしてください。健康診断で慢性腎臓病の疑いを指摘されて当院を受診された患者さんの約3分の1の方は、タンパク尿や血尿など尿に何らかの異常があり、適切な治療か経過観察が必要な状態でした。しかし、残りの3分の2の方は尿に異常がなく、特に治療は必要ない状態でした。健康診断に心配のし過ぎは不要です」

 腎臓はいたわらないといけませんね。

 「慢性腎臓病になると心筋梗塞のリスクが高まるとも言われています。腎臓病は血管の病気なので動脈硬化につながり、高血圧や糖尿病を併発しているケースも多いです。まずは、生活習慣病になるような暴飲暴食はしないこと。血糖値を急激に上げる食べ物、飲み物は取り過ぎない。塩分はもちろん取り過ぎは良くないですが、中には控えすぎると腎機能が悪化する場合もあります。塩は食卓塩ではなく、ミネラルが含まれる岩塩などの自然塩がいいでしょう。タンパク質の摂取のし過ぎにも注意してください。腎臓の糸球体に負担がかかってしまうからです。ですから、慢性腎臓病の方はプロテインを安易に摂取しない方がいいと思います。健康オタクになって各種のサプリメントを取り過ぎないことも大事。やはり腎臓に負担をかけます」

 なんでもほどほどに、ということですね。

 「あとは、口呼吸はしない。鼻というフィルターを通さず、口から汚れた空気が直接入ると、喉のへんとうや鼻の奥の上咽頭に慢性の炎症を起こすことがあります。それがきっかけで、本来は体に良い働きをするIgAという抗体に異常が生じ、腎臓の糸球体を攻撃して慢性腎臓病になることがあります。これが“IgA腎症”です。IgA腎症は早い段階で治療すれば治ります」

 腎不全になって、人工透析になったら怖いなと心配する方も多いです。

 「医療機関だけでなく、自宅でできる在宅血液透析もありますし、自分の腹膜を使い、やはり自宅でできる腹膜透析もあります。夜間透析や、寝ている間に長時間かけて行う深夜透析と、生活スタイルに合わせた選択肢もあります。透析医療に対して悲観的になる必要はありません」

 腎臓が大事な臓器であることが分かりました。熱帯魚の水槽を思い浮かべてください。ろ過装置の具合が悪くなったら、水はどんどん濁ります。体に置き換えたら…皆さん、お分かりですよね。今年は腎臓に優しい生活を心がけましょうよ!

 【腎臓に優しい生活 NG行動5カ条】

(1)生活習慣病になるような暴飲暴食はしない

(2)塩分は取り過ぎない、控え過ぎにも注意

(3)タンパク質を取り過ぎない

(4)各種サプリメントを取り過ぎない

(5)口呼吸はしない、鼻呼吸を心がける

 ◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の74歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。健康に関する名物コーナーに登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。元為替ディーラーで経済評論家の岩本さゆみ氏との共著「日本経済 本当はどうなってる?」(青春出版社)が販売中。

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