藤井聡太王将と永瀬拓矢九段が、2日制タイトル戦で初対戦する。王将4期の谷川浩司十七世名人(62)が7番勝負を展望した。
タイトル戦に通算27回出場して26期獲得。最高峰の舞台でも衰え知らずの藤井の強さを前に、谷川が期待するのは永瀬の奮起だ。そこで着目するのが昨年10月からの竜王戦。藤井が佐々木勇気八段(30)の挑戦を4勝2敗で退けた。
「竜王戦は接戦続きで、第6局も佐々木さん有利。封じ手直前のミスがなければ最終局までもつれ込んだはずです」。藤井の3勝2敗で迎えた第6局。先手佐々木が採用した相掛かりは、17年の初対戦で藤井によるデビュー以来の連勝を29で止めた戦型であり、手番。1日目終了間際まで佐々木有利で進んだが、端角の王手のタイミングが早く形勢を損ねた。6局目で初めて藤井がブレークした。
「永瀬さんとしては(22歳の)伊藤匠叡王は別にして、同世代で最初に藤井さんに勝つのは自分という意識はあると思う。気が気ではなかったのでは?」
永瀬は佐々木と幼少から競った。年齢は永瀬が2つ上だが、共に04年9月、6級で奨励会入会。藤井の29連勝を止め先に注目されたのは佐々木。永瀬は叡王1期、王座4期とタイトル争いでは先行した。
「努力の永瀬、才能の佐々木」と対比された2人。「竜王戦に関しては佐々木八段がかなり綿密に作戦を練って、普段永瀬さんがやるような戦い方をした。先の先まで研究をして持ち時間でもリードした。永瀬さんも相当刺激を受けたと思う」
竜王戦では多彩な戦型を選択し、角換わり2局に相掛かり、雁木(がんぎ)、矢倉、さらに角交換型振り飛車も採用した。
「振り飛車は効果的だった。(居飛車党へ転向した)永瀬さんも振り飛車を封印していますが、あるぞと見せかけるだけで違います」。永瀬の戦型選択が、最初の注目ポイントになる。(構成・筒崎 嘉一)