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男性ブランコ(1)芸人になりたかった男と、芸人になると夢にも思わなかった男 演劇サークルがつむいだ縁

スポニチアネックス 2025年1月13日 11時2分

 多士済々な吉本芸人の中でも異彩を放つ。「キングオブコント2021」準優勝、「M―1グランプリ2022」4位など、本業でもお笑い界屈指の実力を持ちながら役者としても活躍。2月には演劇界の重鎮・後藤ひろひと(55)の作品「FOLKER」の再演舞台に立つ。大学時代に演劇サークルで知り合った2人の目指すところはどこなのか?狂気さえはらんだ独特の笑いを追求するコンビの将来像を聞いた。(取材・構成 江良 真)

【男性ブランコ・インタビュー(1)】

◆◆ 来月挑戦のリアル演劇 共演が楽しみな役者は意外にも内場勝則 ◆◆

 ―昨年は本業のお笑い賞レースは残念な結果でしたが、テレビドラマ、舞台と、とても幅広く活躍されていました。2月からは後藤ひろひとさん演出の舞台にも出演されます。

 平井まさあき「ぼくら学生のころは演劇サークルでしたから。やっぱり光栄が過ぎますね」

 ―女性の受刑囚の話で、紅ゆずるさん、遠藤久美子さん、小島聖さんなどキャリア十分の女優さんに、松尾貴史さん、粟根まことさんら演劇界で長年活躍されてきた方もいらっしゃいます。

 浦井のりひろ「そうですねえ。ご一緒できるのは光栄です。中でも内場勝則さんとの共演は楽しみです」

 ―内場さん?吉本新喜劇の?

 浦井「本当に小学校の頃からずっと吉本新喜劇は見てましたから。あこがれです」

 ―お仕事は一緒にされたことはないんですか?

 平井「仕事はないんです。挨拶とかはあるんですけど。関西の子供やったので、土曜の昼は新喜劇見てましたから。楽しみですね」

 ―意外な感想でした(笑い)。演劇の舞台と、お笑いのコント。ステージの上で演じるというところは同じようにも思えますが、いかがでしょう?

 平井「コントや単独ライブは台本があってないようなもので、お客さんの反応を見ながらやる部分が大きいんですが、舞台は基本的にセリフ通りにやりたいんです。それがなかなか普通に技術でできなかったりする場合もあるんですけど、ちょっと変えてしまうと、意味合いまで変わっちゃうかも怖さもあるので。緊張感はありますね」

 浦井「僕もそうなんですが、台本に書いてあることの、ベストな言い方を探すのが好きですね。言い方次第でウケたりウケなかったりするときがあるんですよね」

 ―似て非なるものなんですね。

 平井「競技が違うという感じです。舞台はとにかく大人数。寄席はスベってもぼくら男性ブランコが責任を持てる。舞台は変にセリフを替えてリズムを壊したら、相手役の役者さんに迷惑かけちゃうときもある」

 ―なるほど。ところで、お2人は元々大学の演劇サークルで知り合われたということですが、やはりショービジネスへのあこがれはあったのでしょうか?

◆◆ お笑いサークル皆無の大学…平井は仕方なく演劇サークルに ◆◆

 浦井「僕はもう、全然なかったです。どっちかというと俳優さんとかそういう道に行けたら、みたいなことさえ考えてなかった。だから芸人になろう、なんて考えたこともなかったですね」

 平井「僕は小5から芸人になりたかったんです。あわよくば高卒でNSC行けたらと思ってたんですけど、勇気が出ず(笑い)。同じ思いを持ってる同級生もいなかったし。でも、関西の大学だったら通学しながらNSC通えるかも?と思ったんですが、僕の行ってた滋賀大学は難波まで2時間くらいかかるので(笑い)。断念しました」

 ―お笑い系のサークルではなく演劇なんですね。

 平井「最初は落研に入ろうと思ったんですが、うちの大学にはなくて。お笑いサークルもなかった。ただ、演劇サークルが新歓イベントでコントやってたんですよ。まあ20人ぐらいのキャパですけど、ちゃんと一般のお客さんも入ってて、笑いもきてて。ここならコントできるわって思って。で、演劇サークルに僕は入りました」

 浦井「関西小劇団はとにかく活発で。それこそ後藤さんのPiperとか、生瀬勝久さんがいた劇団そとこばち、ヨーロッパ企画とかすごくて」

 平井「とんでもなかったですね。ボケもおもろいし、話もおもしろいし、怖さもあって、せつなさもあって。衝撃的でしたね。おもろ!と思いましたね」

 浦井「僕はしんどい方が多かった。3カ月くらい一生懸命準備して、でも幕が開いたら客席は3、4人とかなんです。あんだけ準備しても見てもらえないことのつらさ。お客さんがあってのお笑いであったり、その舞台なんだなって、もう痛感させられて、サークルは1年で辞めてしまいました」

 ―でも、平井さんとは連絡を取り合ってたんですね?

 浦井「月1ぐらいで会っては、ごはん食べながら近況報告みたいな感じでした。演劇サークル辞めてからは、高校の友達とアカペラサークルに入ったんです。それがけっこう楽しくて。やっぱ人前に立って何かするのは好きなんやな、とか思いながらやってたんですけど、上級生になったらみんな就活に入って引退するんですよ。僕は大学も行かずブラブラしてたので全然やることがなくなって。そんなときにNHKでラーメンズさんを見たんです。こういう形でお笑いをやっている人がいるんやと思って、それまで新喜劇とか漫才番組はめっちゃ好きで見てたんですけど、まだ全然違うお笑いの形っていうのがあるんやと思って、これならできるかもしれないと思ったんです」

 ―そこでNSCという選択肢が生まれたんですね。

 浦井「そうですね。お笑いをする方法がそれしかわからなかった。平井も誘いたかったんですけど、芸人へのあこがれがあるのは知ってましたけど、なんかどこかの会社の内定もらってるみたいなことも聞いてたんで、無理やろなあ、と思ってました」

 平井「びっくりしました。NSC入ろうかと思ってんねん、みたいなことを言われて。おれも入るで、となって」

 浦井「そうやったん?でしたね(笑い)。内定は?って聞いたら、NSC入ろうと思ってるんで、もう断ったって。じゃあもう、組んで入るか、となりました」=(2)に続く

 ◇男性ブランコ 平井まさあき(ひらい・まさあき)1987年(昭62)8月1日生まれ。兵庫県豊岡市出身の37歳。浦井のりひろ(うらい・のりひろ)1987年(昭62)12月3日生まれ。京都市出身の37歳。NSC大阪校33期生。2011年結成。17年に東京拠点で活動を始めてから頭角を現す。21年、キングオブコントで準V。翌年のM-1グランプリでも4位に入りブレイクした。お笑いだけでなくドラマや舞台にも積極的に出演。平井は昨年10月のTBSドラマ「ライオンの隠れ家」で好演し、話題を呼んだ。

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