◇第103回全国高校サッカー選手権大会決勝 前橋育英1―1(PK9-8)流通経大柏(2025年1月13日 東京・国立競技場)
第103回全国高校サッカー選手権大会決勝が13日、東京・国立競技場で行われ、前橋育英(群馬)がPK戦で流通経大柏(千葉)を破り、7大会ぶり2度目の優勝を飾った。7年前の決勝と同カードとなった因縁の一戦は、再びタイガー軍団に軍配が上がった。
1点を追う前半31分、MF黒沢佑晟(3年)が右サイド、ゴールライン際で粘り、鋭い切り替えで相手DFを振り切ると、クロスを供給。ゴール前逆サイドのMF柴野快仁(2年)が頭を合わせて、同点に追いついた。後半はともにゴールを奪えず、1-1のまま延長戦へ。10分ハーフの延長戦でも決着がつかず、PK戦に突入した。
PK戦では両チームともにキッカー5人が成功。両チーム8人目のキッカーが外したものの、9人目は成功。10人目、先行の流通経大柏のシュートをGK藤原優希(3年)がセーブ。最後は同点弾のMF柴野が冷静に決めて、優勝に導いた。この日は歴代最多となる5万8347人が詰めかけ、大熱戦に場内からはどよめきが起きた。
7カ月で生まれ変わった。昨年6月の県総体で準決勝敗退。17年から続いていた連覇が6で止まった。それでも、山田耕介監督(65)は「負けたことがあえて良かった」という。口癖は「スキルよりウィル(意志)」。選手たちには「何事も強い意志がないとやり通せない」と説き、反骨心を引き出した。厳しさを全面に出していたMF石井陽主将(3年)は、メンバーに合わせたリーダーシップを模索。ミスはとがめず、励ます。ポジティブな声で、チームを明るい雰囲気に変えた。
県予選決勝は、県総体で敗れた共愛学園に延長戦の末に雪辱。今大会は初戦で米子北との強豪対決を制すと、2回戦の愛工大名電はPK戦で勝利。しぶとい戦いで勝ち上がってきた。山田監督は7カ月前の敗戦を改めて振り返る。「引き締まったというか。まだまだ俺たちは何も成し遂げていないと。あれからだいぶ良くなりました」。どん底からはい上がったチームは強かった。
▼山田耕介監督 いやーーーー良かったです。いやーもうね、あんまり今年はねーという感じだったんですけど、本当に選手たち生徒たちは本当によく頑張ってくれました。(PK戦は)最後まで選手たちを信じて、絶対やってくれるというのは心の中でずっと叫んでました。
▼石井陽主将 チームのみんなが助けてくれて、ここまでついてきてくれたので本当にチームのみんなに感謝しています。苦しい時期が多くて、選手権大会中も本当に自分もうまくいかないことだったり、チームとしてもうまくいかないことがあって、それでも本当にチームで乗り越えてきて、この結果が出たので本当にうれしいです。
<通算来場者数が史上最多>今大会の通算来場者数が35万7484人と発表された。決勝戦が成人の日に固定された第81回大会以降、最多だった33万6999人(第98回大会)を超えて史上最多記録となった。また、決勝戦の前売り券は試合前日の12日に完売。決勝戦来場者数は5万8347人となり、第98回大会の5万6025人を超え最多記録となった。
▼前橋育英 1963年(昭38)創立の私立。建学の精神は「正直・純潔・無私・愛」。元日本代表の山口素弘氏や故松田直樹さんをはじめ、100人以上のJリーガーを輩出。部活動が盛んで、野球部は13年夏の甲子園で全国制覇。
▼17年度決勝のVTR 一進一退の攻防が続き、スコアレスで迎えた試合終了間際、前橋育英のFW榎本が値千金の決勝ゴール。夏冬2冠が懸かっていた流通経大柏を1―0の劇的勝利で破り、県勢初優勝を飾った。前橋育英DF角田(コルトレイク)、流通経大柏DF関川(鹿島)をはじめ、両軍のスタメン22人中14人が後にJリーグへと羽ばたいた。