◇ALSOK杯第74期王将戦7番勝負 第1局第2日(2025年1月13日 静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室)
【関口武史 第1局明暗分けた一手】 永瀬の封じ手は中央に援軍を送る▲7七桂、金銀の働きを封印する超攻撃的な一手で再開された。永瀬は狙い通り▲6五桂~▲4五桂と全軍で藤井陣に襲い掛かる。中盤の難所を迎え両者は惜しみなく時間を投入し、濃密な水面下の攻防が繰り広げられた。藤井は△2三金に90分、永瀬は昼食休憩を挟んで99分で▲7一角、藤井はさらに50分を費やし△9二飛と手を渡した。
重厚な応酬を経て互角の形勢が続いたが、午後4時過ぎ▲8二金と飛車を奪い永瀬が抜け出した。苦しくなった藤井は△6五桂~△5五香と永瀬陣に迫る勝負手を連発し、流れを引き寄せる。永瀬の緩みを捉え攻守が入れ替わると藤井の指し手がさえた。
永瀬陣の要の金を奪うと一転、△4四金(A図)と自陣を整え逆転に成功。香車にひもをつけ、王頭を守り、▲4六桂を未然に防ぐ一石三鳥の活用。一時はへき地に追いやられた左金が盤面中央で輝いている。まさに「勝ち将棋鬼のごとし」というべき展開で藤井が制勝した。(スポニチ本紙観戦記者)