琴桜は前日の阿炎戦の黒星が尾を引いているようだった。気持ちと体がバラバラで動きが硬かった。
いつもは仕切りの時に相手の様子を見て、横にずれたりする工夫がある。だが、今場所はそういう気持ちの余裕がないのか、簡単に立っている。翔猿戦もそうだった。腰高の悪癖が出て、相手にすぐに右を差された。小手に振って体勢を立て直そうとしたものの、慎重さを欠いて墓穴を掘った。まわしも何もつかんでいないのに、慌てて前に出て土俵際でかわされ、そのまま落ちた。
序盤の2敗は厳しい。だが、まだ可能性がなくなったわけではない。勝たなければと意識するから体が硬くなる。全ては気持ち次第。自分の相撲を取り切ることに集中するしか打開策はない。それでも勝てなければ、まだ綱を張る力がないと思って出直せば良いだけのことだ。(元大関・栃東)