悔恨の2文字は新たな自分たちと出会うためにある。大阪ガス・清水聖也外野手(27)は昨季の屈辱をバネに、入社6年目となる今季へ向かう。
「去年はああいう形でシーズンを終えてしまいました。チームとして都市対抗、日本選手権でもう1度、優勝するというところへ向かって行きます。優勝経験のあるチーム。精いっぱいというのではなく、当たり前にそこを目指せるチームづくりを意識してやっていかないといけません」
18年の都市対抗で2大大会初優勝を果たすと、日本選手権では19、21、23年で計3度の優勝。近年は目覚ましい成績を収めながら、昨季は苦しんだ。第5代表決定戦までもつれ込んだ都市対抗は2年連続の予選敗退。日本選手権は代表決定戦にすら進むことはできなかった。常勝軍団らしからぬ戦いぶり。副主将でもある清水は冷静に、当時の心境を振り返る。
「どちらの大会も予選を突破することにいっぱいいっぱいになっていました。周りのチームも本気でぶつかってくる中、それではああいう結果になって当然。都市対抗の負けをずるずる引きずっていましたし、自分たちで勝手に自分たちを苦しめていたと思います」
清水は元来、誰よりもチームの勝利を願う選手。根底には野球部を応援してくれる社員やファンの思いに結果で応えたいという強い思いがある。峯岡格監督が「背中で引っ張れる選手。チームのためにということをいつも言ってくれますし、プレーでそれが体現できる選手です」と評すように、責任感が強すぎるゆえ、必要以上に重圧を感じてしまったのだろう。都市対抗予選敗退から日本一まで駆け上がっていった23年の成功体験を生かすことができなかった。
「選手権はチームにとって連覇がかかっていました。連覇を目指せるのはうちだけだったのに、そっちに目を向けるような雰囲気をつくりだすこともできなかった。本当に反省しています」
現実から目を背けることなく、とことん向き合ったのは、同じ過ちを繰り返したくないからだ。だからこそ、新チーム結成後は前向きな気持ちで野球と向き合うことができている。昨年11月中旬には、慢性的な痛みを抱えていた右足首を手術した。リハビリは順調で、2月上旬からの和歌山・田辺キャンプではチーム本隊に合流できる見込み。技術練習に時間を割けなかった分、例年以上に上半身のトレーニングや体幹強化に取り組むことができた。清水は言葉に力を込める。
「もう1度、体づくりに目を向けて。普通に戻るだけじゃ面白くないので、力強くなって復帰するつもりです」
23年の日本選手権では「3番・中堅」として20打数9安打と打ちまくり、日本一に貢献した。王者のプライドを取り戻し、新たな自分と出会うために――。清水は黙々と汗を流している。