藤井聡太王将(22)=7冠=が挑戦者の永瀬拓矢九段(32)に先勝したALSOK杯第74期王将戦7番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の第1局から一夜明けた14日、対局会場の静岡県掛川市でスポニチ本紙恒例の勝者の記念撮影に臨み、ラジオ体操に飛び入り参加した。掛川対局は3戦3勝の相性の良さだが、過去2回の記念撮影とは違い「読みになかった」と苦笑い。25、26日、京都・伏見稲荷大社での第2局へは、回答を保留する質問もあり戦闘モードだった。
タクシーで撮影会場に到着した藤井の視界に、約20人の人だかりが飛び込んだ。忍者のいでたちをした掛川城戦国おもてなし隊に市の公式キャラクター「茶のみやきんじろう」ら。「何をやるんだろう」。不安げに漏らすと、意を決して車外へ足を踏み出した。
掛川では過去2戦2勝。その役得は、第71期の勝者の記念撮影が天竜浜名湖鉄道の車掌、第72期は掛川花鳥園でコガネメキシコインコから祝福を受けた。それらは事前研究に熱心な藤井らしく、読みの範囲内だった。
なぜなら車掌は日本鉄道賞選考委員も務める自身の鉄道ファンぶり、掛川花鳥園は第70期第1局に勝利し、同園を訪れた当時の渡辺明王将の満面の笑みが印象的な紙面から想像し得た。ところが今回は、控室で真っ赤なジャージーを手渡され、輪の中で体を大きく使うよう指示された。
「意表を突かれました。(3回目で)一番予想が付かなかった」。大盤解説会場にもなった大日本報徳社の敷地で12年前から続く「ほうとくラジオ体操」。盤上の読みにたけた王将もスポニチ本紙カメラマンの思惑までは読み切れなかった。
それでも体を動かすと次第に笑顔が広がった。実は前期王将戦の副賞フィットネスバイクをこぐのと同様、ラジオ体操もYouTube動画を見ながら導入済みだった。
第1局を振り返る言葉にも活気があった。「指されて受けが難しい。じっくりした読み合いができて充実感があった」。永瀬からの51手目▲6五桂、53手目▲4五桂。自身の指し手より、自陣へ圧力を加えられたダブル跳躍を挙げた。
先勝で臨む第2局。永瀬とのタイトル戦で喫した2敗(10勝)はいずれも勝率上有利な先手番、戦型は得意の角換わりだった。
「永瀬九段は後手番での作戦が幅広い」と気を引き締める一方、では、永瀬の戦型選択を受け入れるのかとの質問には「ノーコメントで」。苦笑いで回答を保留し、勝負師の顔をのぞかせた。(筒崎 嘉一)
≪「対局のたび依頼を待っていた」「掛川城戦国おもてなし隊」念願≫藤井は掛川城に仕える忍者たちとラジオ体操をした。22年の第71期王将戦に向け、本紙元日付で戦国武将に扮するなど武将との縁はあったものの「忍者と関わるのは初めてかもしれません」と笑顔を見せた。参加したのは、忍者や武将の格好で城のガイドを行う「掛川城戦国おもてなし隊」のメンバー。頭を務める小澤孝司さん(77)は「藤井さんが掛川で対局のたびに、依頼を待っていた。ついに念願がかないました」と喜んだ。
≪永瀬九段対局前夜から14杯 フレッシュジュース発売へ≫永瀬が対局前夜の夕食から数えて計14杯を堪能し、藤井も飲んだフレッシュジュースが「掛川グランドホテル」で近日中に発売される。味は地元産の紅ほっぺ(いちご)、キウイの2種類。元々は王将戦のために同ホテルが作っていたが、両者が味わったことで反響を呼び、レストランでの提供が決定した。副支配人の堀田淳一さん(44)は「自信のあるメニューですので、ぜひお楽しみいただきたい」とアピールした。詳細は今後、ホテルの公式サイトなどで発信予定。