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2度目のグラミー賞ノミネート!注目の音楽家・宅見将典とは?その信条に深く根付く亡き母の教え

スポニチアネックス 2025年1月16日 19時3分

 【ききみみ 音楽ハンター/宅見将典<後編>】世界最高峰の音楽賞「第67回グラミー賞」授賞式が2月3日(日本時間)行われる。一昨年に最優秀グローバル・ミュージック・アルバム賞受賞の快挙を遂げた宅見将典(46)が再び、楽曲「Kashira」でグローバル・ミュージック・パフォーマンス部門にノミネートされた。前編では、彼がグラミーを明確に目指すこととなった音楽人生の転機を紹介。後編は、グラミー賞への思いと未来、彼の人格形成に大きくかかわった母についてのトークをフィーチャーする。(萩原 可奈)

 グラミー賞獲得を目指した12年の努力が実り2023年、ついにMasa Takumi名義で発表した「Sakura」グローバル・ミュージック・アルバム賞にノミネートされ、目指した憧れの受賞会場へ。ノミネート者としてMASANORI TAKUMIの名がシアターで読み上げられるという夢がかなった上に、受賞者としても名を呼ばれた。「壇上に登るのは想像さえしてなかったんです。もうノミネートだけで十分光栄です、と。だからスピーチも用意してなかった」と明かした。

 

 当時の多幸感あふれる特別な光景をしみじみと回想した宅見だが、「いまだに受賞の実感がない」という。音楽界最高の栄誉を手にして状況は大きく変化したが、天狗になることはない。「もう40代半ば。かつてバンドデビューで調子に乗ってしまっての反省点がいっぱいあるので」と苦笑いした。

 インタビュー中、とても印象に残った言葉がある。グラミー賞受賞で一番良かったことは「本来の自分に戻れたこと」だと語った。その意味について、彼はこう説明した。

 「僕は誰に対しても同じ態度で接したいんです。うちの母がそういう人だったんで。でも、地位や立場がないと分かると足もと見たり、高圧的になる人がいる。過去にはそういう人に対して、こちらも威張らないといけない時期があった。手前味噌の話をわざわざ用意して。盾だけじゃなく矛を用意しないといけない自分がすごく嫌でした。でも、グラミーという大きな盾に守られてる今は矛がいらなくなって、“その辺の気さくな人”で居られる。変な話だけど、それが一番うれしいんです」

 2年後、再びノミネートを受けた。は二胡、三味線などの民族楽器の音色が印象的なアジア色あふれる壮大で幻想的な作品「KAshira」が評価を得た。「実は今年の3月に、母が亡くなりまして。いつも仕事で何かいいことがあると母に報告するのが自分の喜びだった。今回もすぐお線香あげて、母に報告しました」と明かした。

 昨年末には、ベストドレッサー賞を受賞。「思ってもいない受賞。こんなギフトももらえるのか、と驚いたし、うれしかった。音楽家なのでファッションにそこまで詳しくないけど、演奏する時や人前に出るときの服には気を遣うほうです」と語る。さらに、母が他界し、落ち込む中でもらった賞だ。「何か“ちゃんとした服着なさい”っていう母からのメッセージのような気もしたんです。身だしなみにうるさかったんで」とほほえんだ。

 授賞式を控える現在、思い描く未来は?「自分の作品でのグラミーへのエントリーは今回を最後にしばらくお休みしようと思う。大変だし、道を譲っていかないとというのもある」と告白。「プロデュースや楽曲提供は続けますが、今後は映画音楽に力を入れたい。そして、世界やグラミー賞を目指す日本人をサポートしたい」と構想を打ち明けた。

 「日本の音楽業界もアーティストも世界進出を過去最高に意識している時代。でも、その道筋や方法が分からない人は多い。世界を目指すアーティストのためのプラットフォームを作りたい。英語もしゃべれないところからグラミー賞を獲った僕自身がエビデンス。自分で全部やってきたので伝えられることがある」

 自ら切り拓いた米国での経験と実績、幼少期からの母の教えを胸に、宅見将典は音楽人生を軽やかに歩み続ける。まずは2月3日の授賞式に注目していただきたい。

 ◇宅見 将典(たくみ・まさのり)1978年(昭53)11月14日、大阪府出身の46歳。作編曲家/マルチ・インストゥルメンタル・アーティスト。11年、自身が手掛けたAAAの「CALL」が第53回日本レコード大賞・優秀作品賞を受賞。グラミー賞受賞後の23年7月、文化庁長官表彰(国際芸術部門)を受けた。

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