福岡市の博多座で2月に歌舞伎の新たなステージと銘打った“歌舞伎NEXT”として「朧(おぼろ)の森に棲む鬼」が上演される。嘘と欲望に支配されながら王を目指すダークヒーロー、ライの物語。ダブルキャストでライとサダミツを演じる松本幸四郎(52)と尾上松也(39)が来福して作品の魅力をたっぷり語った。
憧れた作品への出演オファーに松也は「きっとキンタだな」と主人公ライと行動をともにする弟分でお調子者の役柄を勝手に想像した。そうじゃないと聞き「え!じゃあ幸四郎さんがキンタをするのか?」と頭が一瞬混乱したことを打ち明け笑いを誘った。
2007年の作品を初めて見た際の衝撃が脳裏にある。「とにかく格好よくておもしろい」と目を奪われた。このとき主役だった幸四郎とのダブルキャストが実現し「凄く光栄だけどプレッシャーを感じた」と打ち明ける。稽古場での雰囲気が不安な気持ちを消していった。演出を務めるいのうえひでのり氏を中心にもう一度ゼロからつくりあげていく空気があった。「逆にほっとしたのもありました。全然違う作品を見ているような感覚で取り組めている。なんかいい裏切りというか発見でした」と稽古をするごとに新鮮な思いに出会えている。
今回演じる主人公のライはうそにまみれた役柄で「本当に救いようのないぐらいの悪。あらゆる演劇の主人公の中でもトップレベルに入る」と分析。「すがすがしいぐらいの堂々たる悪をやりたい」と気合が入る一方、初めて見た際に悪の中にあるわずかな善を感じた。「その辺の深さが脚本にある。そこを追求していけたらいい」と役者としての腕の見せどころになりそうだ。
劇団☆新感線作品は18年の「メタルマクベスdisc2」に出演したが、歌舞伎NEXTへの出演は初めて。「最低でも2回は来ていただいて、盛り上げていただければ」と呼びかけていた。