放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は17日、公式サイトを通じ、この日行われた第46号放送倫理検証委員会の議事を公開。テレビ東京「激録・警察密着24時!!」について「鬼滅の刃」模倣品捜査密着事案で放送倫理違反があったと判断したと発表した。これを受け、テレビ東京が声明を発表した。
同局は「2023年3月28日に放送した「激録・警察密着 24 時!!」について、本日、BPO放送倫理検証委員会から、放送倫理違反があったとする意見が通知されました。当社はこれを真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります。本番組をめぐって当社はこれまで、不適切な内容があったことを深く反省し、2024年5月28日にはホームページでのお詫びに加え、お詫び放送をするなどの対応をしてきました。さらに、本番組を今後放送しないことも決めています。また、本事案の放送責任に照らして社内処分を実施し、社長、担当役員が報酬の一部を返上しました。再発防止の取り組みとして、放送前に番組をチェックする専門の部署を新設し、社内外の制作スタッフに対する研修を定期的に行っています。当社は今回のBPOの意見を踏まえ、視聴者の皆様の信頼を損なうことのないよう、適正な放送への対策を講じ、再発防止に努めてまいります」との声明を発表した。
報告では「テレビ東京は2023年3月、『激録・警察密着24時!!』の中で「人気アニメ『鬼滅の刃』に便乗 悪質コピー商品の販売業者を追い詰めろ」として、販売業者が「不正競争防止法違反」で摘発された事件を取り上げたが、販売業者から放送内容が名誉を毀損する表現や虚偽の事実を警察官に演じさせたねつ造の疑いがあるとして抗議及び申し入れ書が送られた。これを受けてテレビ東京は2024年5月に不適切な内容が複数あったことを認め、謝罪するおわび放送をした」と経緯を説明した。
「委員会は同年7月『放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要がある』として審議入りし、テレビ東京や制作会社スタッフなどを対象にヒアリングを実施。その結果、被疑者3名が不起訴になっていたことに触れなかった、『鬼滅の刃』のキャラクターを描いた商品を発注した事実はなかった、密着ドキュメントをうたいながら捜査のほとんどが事後撮影だったことなどを確認した。こうした問題について委員会は、『モザイクなどをすれば個人特定に対する配慮は足りている』とする“モザイク信仰”が人権意識を鈍らせた」と指摘。「また逮捕と犯罪者を安直に結びつける構図にとらわれ、ナレーションであおり、刺激的なスーパーで犯罪捜査をエンタメ化するこの番組のステレオタイプが繰り返されたなどの4つの要因を挙げた」とした。
そのうえで「以上のことから本件放送は、事実と異なる内容を報じ、視聴者の信頼を裏切り、放送倫理綱領、民放連の放送基準及びテレビ東京の放送編成基準の各項目に反しているとして、放送倫理違反があると判断した」と見解を示した。
同番組は23年3月に放送した同番組で、アニメ「鬼滅の刃」に絡む不正競争防止法違反事件を取り上げた際、4人が逮捕されたと放送したが、その後3人が不起訴になったことには言及しなかった。また、4人について「逆ギレ」や「今度は泣き落とし」といったナレーションをつける過剰な演出もあった。同局は演出に事実誤認があったとして謝罪し番組の終了と番組担当者及び監督責任者の計2名に対して減給等の社内処分をくだしたことを発表。
昨年6月19日、BPO放送人権委員会が関係者からの人権侵害を訴える申立てを受けて審理に入ることを発表していた。