【25年版球界新士録(5)DeNA3位・加藤響内野手】想像してもらいたい。サラリーマンが仕事を終え夜に自宅マンションに帰宅する。すると、エントランス内でプロ野球選手が父のトスで「シャトル(バドミントンの羽根)打ち」に熱中している。加藤は言う。「小学1年の時からです。マンションの方々も理解を示してくれる。人が通る時は当然やめて、あいさつします」。
東海大相模で高校通算35発をマークして東洋大に進学も、3年冬で途中退部した。「去年のこの時期は野球をやめて、普通に就職を考えていた」。だが縁があり、在学しながら昨季は四国・徳島でプレーを続ける運びとなった。厚木市内から通う東洋大4年生と、四国の独立リーガーという二足のわらじでつかんだプロ入り切符。新人合同自主トレ中も卒論に取り組んでいる。
徳島では64試合で打率・311、6本塁打、41打点。主に遊撃を守り、強打の右打ち内野手と期待される。その原点がシャトル打ちだ。指名後も父・和博さんに「お願いします」と頭を下げ、エントランスで打ち続けた。
「僕を幼少期から知るマンションの方もいて、羽根打ち中に“プロ野球選手になれて良かったね”と言ってくれます。父は(スイングが強く鋭く壁に当たり)最近は(シャトルが)すぐに壊れると言ってます」と笑う。
マンション住民が身近に感じるプロ野球選手、それが加藤。帰省した時のシャトル打ちは「続けます」と誓う。原点回帰の精神を忘れずに、いつまでも快音を「響」かせる。 (大木 穂高)