俳優の松坂桃李(36)主演のTBS系日曜劇場「御上先生」(日曜後9・00)の第1話が、19日に放送される。「官僚×教師」を描く全く新しい学園ドラマとして、放送前から注目を集めていた話題作。初回放送を前に、同作を手掛ける飯田和孝プロデューサーに作品に込めた思いを聞いた。(中村 綾佳)
同作は、松坂演じる東大卒の「文部科学省エリート官僚」が出向で私立高3年の担任教師になったことを機に、生徒を導きながら教育制度を現場から壊して権力に立ち向かう物語。令和の18歳とともに、日本教育にはびこる腐った権力へ立ち向かう大逆転教育再生ストーリー。映画「新聞記者」などで知られる詩森ろば氏によるオリジナル脚本で、これまで「ドラゴン桜」(21年)や「VIVANT」(23年)、「アンチヒーロー」(24年)など数多くのヒット作を手掛けてきた飯田氏がプロデューサーを務める。
実は飯田氏は教育学部出身で、教職課程を取得した経緯がある「元・教員志望」だった。飯田氏は「金八先生の第5シリーズ(1999年)を見て、学校の先生に憧れて。受験勉強をしてあえなく撃沈して、1浪をして教育学部に入って、教職課程をとったんです」と教師を目指していた過去を振り返り、テレビマンとなった現在も「いつか『金八先生』みたいな学園ドラマをつくりたい」という目標を抱いていた。
そして今回、その夢をついに実現させた。きっかけとなったのは、コロナ禍でたまたま見た“あるアーティストの動画”に登場していた高校生たちの姿。キラキラと輝く学生を見て「この子たちが輝けるドラマをつくろう」と、長年の夢に挑戦することを決意した。
その時の思いを、飯田氏は「現代は“生きづらい世の中”というか、最近の若者が…なんて言われることもありますが、実際の学生たちには凄く熱量があって。そんな若者の姿に突き動かされました」と振り返る。
学園ドラマを描くにあたり、飯田氏がまず思い浮かんだのは、憧れだった「金八先生」のような作品だった。しかし「今まで金八先生への思いがあって、“憧れを捨てましょう”となれなかった。それだと、“憧れを超えられない”と思った」と回顧。憧れを超えようという思いで、脚本を手掛ける詩森氏と構想を練った結果、「官僚×教育」という全くテーマにたどり着いた。
その経緯を、飯田氏は「扱うテーマを、ただ今の時代に沿ったものにするという学園ドラマだと、僕の中で勝算がないといいますか、新しい物をつくれる自信がなく…。詩森さんに脚本を書いていただくならば、社会的な要素は入れたいと。新たな切り口を詩森さんと考えて、『官僚と教師』という結論に至った」という。これらのイメージについては「2020年頃から考えていました」と、5年前から構想を温めていたことを明かした。
教育を巡るさまざまな社会的問題を取り入れる一方で、飯田氏は「ベースは学園ドラマ」と強調。「僕はこのドラマの主役は“生徒たち”だと思っていて、そこは揺るぎません。この学園ドラマを通じて世の中、社会、企業を生きる人たちを学校の中に表現しているというイメージ。学園ドラマに、社会派のエッセンスが入っているというのが僕の中での印象です」と意図を明かした。
飯田氏の「夢の実現」ともいえる今作の主演には、「VIVANT」でタッグを組んだ松坂を起用。「松坂さんは演技力はもちろん、ビジュアルも含めて“得体がしれない”という役柄がお上手だと思っていて。御上先生もつかみどころがない役柄。2020年頃にこのドラマの企画を始めたときに、松坂さんにオファーをしようと決めていた」と明かし、実際の演技を見て「本当にイメージしていた以上です」と、その演技力の高さに賛辞を贈った。
飯田氏といえば「VIVANT」を始め“考察ドラマ”といわれる作品を多く手がけてきたが、今作は「考察よりも、このドラマを通して伝えたいことの方が大きい」とイメージを浮かべる。「考察は、それを楽しんでもらえるのであれば、楽しんでほしい。そこで盛り上がってくれるのはうれしい」というが、「このドラマの生徒役の中には、コロナ禍で文化祭もできなかった子たちもいる。このドラマを通じて、人と人とがつながって物事を行うことのパワーの強さや、その中で当事者意識をもって物事を進めるということが、これからの教育として大事なんだ…ということろまでを伝えたい」と願いを込めた。