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イチロー氏の「満票選出ならず」から考えること ギネス記録保持者が残り1年の“へそまがり”

スポニチアネックス 2025年1月19日 15時42分

 【君島圭介のスポーツと人間】

 誤解を生まないよう、まず先に私自身はイチロー氏に投票したことをお伝えしたい。個人的に野球殿堂の投票基準を「(主要部門で)日本新以上の記録をつくった」「日本人初の偉業を成し遂げた」と決めている。

 イチロー氏の数多の記録は当然。今年、一緒に選出された岩瀬仁紀氏にも投票した。NPB最多1002登板を達成した左腕なのだからこちらも選出されてしかるべきだ。

 資格1年目のイチロー氏の得票率が92・6%(323票)で、満票選出されなかったことが話題となったが、この件に関しては野球殿堂博物館の投票規定にも問題があると考えている。

 プレーヤー部門の有資格者は引退後5年以上で、候補期間は15年。野球報道に15年以上携わる委員が7人以内の連記で投票して選考され、有効投票の75%以上で選出される。

 上記の規定では「イチローさんは残り15年ある。それならば残り年数が少ない選手を先に7人選ぼう」と考える記者がいても仕方ないのではないだろうか?

 今年イチロー氏に投票しなかった記者も王貞治氏の言う“へそまがり”というわけではなく、残り年数の少ない選手を優先した結果ではないかと考えている。

 川相昌弘氏(元巨人、中日)は、通算533犠打で大リーグのエディ・コリンズを抜いてギネス世界記録に認定されている。

 巨人時代に当時の長嶋茂雄監督がチャンスで審判にバントの構えをして「代打・川相!」と告げた笑い話も生んだ。プレッシャーの中で敵にも犠打だろうと見抜かれた中できっちり決める。“元祖・失敗しない男”である。

 だが、候補になって14年目の今年も選ばれなかった。ギネスに載っても日本の野球殿堂には入れないとは…。イチロー氏が満票に達しないことより、むしろこっちの方が不思議である。

 川相氏の残り年数は今回が「2年」。つまり来年がラストチャンスだ。

 野球殿堂博物館に提案したい。

 残り年数制度をやめて、それこそ野球殿堂入りしている有識者を中心に毎年候補者を選び、その課程で「野球報道に15年以上携わる委員」が○か×かで投票。その結果を踏まえて野球殿堂博物館が正式決定すればいいのではないか。

 そもそも15年の間に功績の大小が変わるものだろうか?

 2000安打や200勝は素晴らしい数字だが、野球殿堂が名球会と似たような選考基準を持つなら統合すればいい。野球殿堂は犠打の世界記録をつくった川相氏や、捕手として日本人初の大リーガーになった城島健司氏(元ソフトバンク、マリナーズ、阪神)を歴史的に正しく評価する機関であってほしい。

 エディ・コリンズは1939年に記者投票によって米国の野球殿堂入りしている。そのコリンズを抜いた世界記録保持者の川相氏はまだ日本の野球殿堂に入っていない。残された年数はあと1年である。

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