令和の時代に“昭和トレ”で両リーグ最多本塁打を目指す。ソフトバンクの大砲・山川穂高内野手(33)が20日、沖縄・嘉手納町での自主トレを公開した。近年では練習の効率化が進んでいるが、昨季のパ・リーグ2冠王は「質より量」を掲げ“原始的”なトレーニングに特化。キャリアハイをマークすれば日本人最速で通算300本塁打達成となるシーズンに向けて、誰よりもホームランを打つことを誓った。
およそ30メートル5セットの“ぶつかり稽古”。山川が表情をゆがませながら、重さ約1トンの5人乗り乗用車を全身の力を使ってグイグイと押した。
「自主トレは質よりは量だと思っています。原始的な、最新から一番かけ離れた練習をすることをテーマとしてました。タイヤ押しをしたいと思っていましたが、なかったから車を押したらキツくて凄く良かったので」
沖縄・久米島からスタートした愛弟子・リチャード、西武・山野辺との“山川塾”。ほかにも20キロ強のプレートを持ち上げつつのジャンプやスクワットなど、この日も午後の守備練習、打撃練習を除き、過酷な旧来の“特訓”ともいえるメニューに終始した。
球界でも科学的なトレーニングや、練習の効率化が進んでいる。それでも通算4度の本塁打王の実績を誇る大砲は「僕は原始的な方がまだ強いかなと思っている」とかねて口にする。「打撃はどこの筋肉を使っているか聞かれても分からない。バットを持っている手から足先まで使っている」。今季も原始的と表現する“昭和トレ”で鍛え抜いた体でアーチを量産していく。
数字にこだわらない中でもキャリアハイは目安とするところだ。節目の通算300本塁打まで残り48本で、2018年の47本塁打を上回れば大台に到達する。加えて現在の山川の出場数は929試合で、今季中の300号なら日本人最速である田淵幸一(本紙評論家)の1072試合を超えることもできる。
しかし、「ホームランが生きがい、生きざまみたいなもの。そこだけは譲らないようにしていきたい」と矜持(きょうじ)を持つホームランアーチストはこう話す。「(日本人)最速なら行きたいですけど、それよりそのシーズンの日本で一番になりたい。“俺が一番ホームランを打つのが上手な年だったんだ”となるのが目標。去年も本塁打王になり、岡本(巨人)や村上(ヤクルト)にも勝てたことが誇り。48本打っても誰かが50本を打ったら負け。そういうわけにはいかない」
もちろん、その先にあるのはチームの日本一だ。「自分の仕事をしっかりした上で、今年は最後に全員で日本一になりビールかけをしたいです」と言葉に思いを乗せた。 (木下 大一)
≪ピザを報道陣に差し入れ≫
H…山川がピザ10枚を注文し、自主トレ参加メンバーほか報道陣に差し入れした。宅配されたのは「アンソニーズピザ」の特大サイズ。午前中のハードなトレーニングを終えた山川は「皆さんも食べてください」と振る舞った。
≪リチャードは体が締まった≫
H…8年目のリチャードが鍛え抜かれたたくましい姿で飛躍を誓った。師匠・山川に「絶対に変わりたいです」と直訴。およそ2カ月半、徹底的にしごかれた。ハーフパンツからのぞくふくらはぎはガッチガチ。「振り返ると凄い量をやってきました。胃が凄く痛い日もあったし過酷でした。(変化は)動きに出ると思う。言葉じゃなく動きを見てほしい」と意気込みを口にした。自身よりも厳しいメニューを課した山川は「とんでもない量をやっている。誰がどう見ても体が締まったと思う」とうなずいた。