セ・リーグのDH制導入の動きは加速していくのか。20日に都内のホテルで開催されたプロ野球の12球団監督会議で、セ・リーグ本拠地の交流戦でDH制の実施を求める声が上がった。導入賛成派のソフトバンク・小久保監督から交流戦だけ全チームがDH制で戦う試みが提案された。
巨人前監督の原辰徳オーナー付特別顧問は、19年から「セ・リーグもDH制は使うべき」と訴えてきた。野手9人と対戦することで投手のレベルアップにつながり、アマチュアではレギュラーが9人から10人に増え、打撃に特化した選手の育成にもつながると強調。巨人は20年12月のセ・リーグ理事会でコロナ下での投手の負担軽減などを理由に21年の暫定的なDH制導入を提案したが、他球団の賛同を得られなかった。
監督会議では23年にセ・リーグのDH制導入が話題に。最年長で座長を務めた阪神・岡田監督が「DH制について、どうなんでしょうか?」と水を向けると、出席者から「セとパでルールが異なる印象がある。なかなか一つの方向性にならない」との声が上がった。
周囲の状況は変化している。メジャーではナ・リーグが22年からDH制を導入。ア・リーグと足並みをそろえた。日本でもプロ野球の榊原定征コミッショナーは導入に前向きな姿勢を示しており、今後もセ・リーグで継続審議していく方針だ。
監督会議で座長を務めたロッテ・吉井監督は会議後の会見で「DHにしようという流れになってきていると思う」と時流を捉えて語った。この空気感がプロ野球の現場の現在地だろう。ロッキーズ時代に本塁打も放っていて「打席に立った方がパフォーマンスが上がる投手もいるかもしれない。ただ、監督としてはDHの方が投手のケガも防げる」と一筋縄では決まらない。巨人・阿部監督は「いい面も悪い面もある」と慎重。ヤクルト・高津監督は「駆け引きや勝負がなくなってしまう気がする」と反対派だ。
当初は真っ向から否定されたセのDH制。今年の監督会議では、その空気は軟化しているようには感じた。(記者コラム・神田 佑)