◇大相撲初場所11日目(2025年1月22日 東京・両国国技館)
体重73・8キロの軽量力士で、西三段目15枚目・山藤(やまとう、21=出羽海部屋)が西三段目35枚目・大雄翔(22=追手風部屋)を押し出しで下し、5勝目をマーク。春場所(3月9日初日、エディオンアリーナ大阪)での新幕下昇進を確実にした。
対峙(たいじ)した元幕下の実力者、大雄翔は体重155キロを誇り今場所もこの日まで5連勝と好調だった。自分の倍近くの巨漢に対し、山藤は立ち合いで素早く左に動くと相手の背後に回って押し出した。「凄く緊張した。花道で緊張が解けて、やってやろうという気持ちだった」と笑顔を浮かべた。昨年の名古屋場所から4場所連続で勝ち越しを決め「押し相撲などの稽古をしてきた。相撲の番数を一番に考えて取っている」と日頃の稽古の成果に手応えを示した。
身長1メートル82、体重73・8キロで細身の体型。今場所番付に載る全587力士の中で、61・8キロの序二段・宇瑠寅(35=式秀部屋)、68キロの康誠(16=秀ノ山部屋)に次ぐ3番目の軽量だ。日本相撲協会によると1980年代前半に沢幡(飛円)琴大和らが70キロ台で幕下で戦っていたが「最近では70キロ台の幕下は極めて珍しい」という。
山藤は22年春場所で初土俵を踏んだが、入門時は80キロだった。デビューよりも体重が減っており昨年の九州場所では69キロに落ちたという。「食が細い。体重が増えると体調を崩すことがある」と漏らす。最近は増加傾向にあるようで「100キロを目指したい」と意気込む。出羽海部屋には、角界最重量252キロの三段目・出羽ノ城(31)がいる。自身より3倍以上も重い兄弟子と、相撲を取り、ぶつかり稽古で胸を借り、押す力をつけてもらっている。「朝も、一緒にお風呂に入った」と笑顔を見せた。
得意は左下手投げ。最近は突き相撲にも意欲を示す。師匠の出羽海親方(元幕内・小城乃花)からは「(体が)小さいから何でもやれ」と言われているという。前日(10日目)の取組では鮮やかな居反りを決めて館内を沸かした。「思い切って何でもできるようになりたい」。
目標の力士は、プロレスなどでも活躍した元十両の維新力。現役時代は身長1メートル75、体重81キロの体型で躍動した。「動画などで見ている」と話し、兄弟子の幕内・御嶽海(32=出羽海部屋)のおっつけも参考にしているという。体重は「100キロまで増やしたい」というが、このまま70キロ台で十両昇進となれば1965年の楠ノ海(75キロ)以来。その姿を拝見したくなった。
◇山藤勇治(やまとう・ゆうじ)2003年(平15)8月13日生まれ、岐阜県関市出身の21歳。岐阜農林高2年時に全国高校選抜大会80キロ級で準優勝。出羽海部屋に入門し22年春場所初土俵。最高位は今場所の西三段目15枚目。1メートル82、73・5キロ。好きな食べ物はラーメン。兄は三段目・翠桜。