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健大高崎「佐藤と石垣物語」は第2章へ トミー・ジョン手術後の佐藤は投球再開「自分を超えたい」

スポニチアネックス 2025年1月22日 21時33分

 昨秋の関東大会で準優勝した健大高崎(群馬)は今春の選抜出場を当確としている。昨春の選抜では左腕・佐藤龍月、右腕・石垣元気の2年生コンビが決勝までの全5試合を投げきり、創部22年で甲子園初優勝を成し遂げた。鮮烈な甲子園デビューを果たした2人はいま、それぞれの目標に向かって歩んでいる。

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 「直球王石垣」は選抜連覇を狙うチームの大黒柱だ。昨春の選抜では2年生ながら150キロの大台をマークし、夏の群馬大会では常時150キロ近くを計測する異次元の馬力を披露した。秋も進化は止まらない。群馬王者として臨んだ関東大会ではスピードガンが「甘い」とされる球場計測ながら158キロをマークした。

 常時150キロをマークできる高校生は高校野球史でも稀。今秋のドラフトでは上位候補と目されるが、数字に加えて質を追い求めるフェーズに入った。「150キロ」に慢心することなく理想の直球を追い求めている。

 「スピードが出ている割には打たれている。もっと指の第1関節からボールに力を加えることができれば、今の真っすぐより回転数も増えて強さも出てくると思う。そこにいま取り組んでいます」

 石垣の直球の質は決して悪くない。むしろ低めでもミットを叩ける力強さがある。それでもさらなる高みを目指している。「佐藤がいない選抜」で再び頂点を勝ち取るためにレベルアップに余念がない。

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 高校生に打てるわけがなかった。昨年の選抜で佐藤は5試合を投げ、22回を無失点に封じて3勝を挙げた。左投手にとって「鬼門」となる右打者に対し、内角直球で起こし、バックドアのスライダーでカウントを整え、決め球はインローへの「消える」スライダーが炸裂。高校生離れした投球術でゼロを並べ、同校に初の栄冠をもたらした。

 夏の群馬大会でも背番号1として優勝に導いた。だが、大会後に左肘のじん帯損傷と疲労骨折が判明。2回戦で敗退した甲子園ではベンチ入りメンバーから外れ、目標のプロ入りも念頭に手術を決断した。8月30日には左肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を受け、復帰まで約8カ月の見込みとなった。

 高校野球の頂点から一転、投手として最も辛い投げられない日々が始まった。手術以降、リハビリに励んできた佐藤は12月30日にネットスローを再開した。リハビリの一環として20%ほどの出力で一球、一球、回復具合を確かめるように投げた。地道なリハビリも夏にはマウンドに戻る目標があるからこそ、続けることができる。

 「去年の出来事(甲子園優勝、手術)は普通の人では経験できないことだと思います。それを自分の成長につなげていきたい。投げ始めたばかりなんですけど力は2割くらい。ある程度動かさないといけないので腕を使っています。やっぱり復帰したときに以前の自分を超えることを目標にしています。それを考えていたら全然、リハビリ生活も苦しくない。予定通りいけば6、7月くらいに投げられます」

 実は佐藤への取材は遠慮があった。手術は心身ともに大きな負担がある。だから9月以降、話すことがあっても原稿のための取材はしなかった。今回、ネットスローを再開したタイミングで取材を申し込んだ。佐藤は悲壮感を漂わせることなく「みなさんが心配するより、僕は大丈夫です!」と言った。故障がなければ主将や副主将を担ったであろう17歳はタフに振る舞った。

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 記者は11年から16年まで元NPB審判員を務めた。経験を生かしてブルペンで投手をジャッジする企画をスポニチ紙面、YouTubeで展開している。約1年前の選抜前に2人をジャッジしたとき、紙面に次の通り記した。

 「間違いなく2人は大会屈指の好投手。2人が初の甲子園に挑む様を、一野球記者としてリアルタイムで追えることに幸せを感じる。選抜出場校が決まった1月27日付の本紙紙面で同校の評価を「A」としたが、最高評価の「特A」に引き上げたい。その判断が正しいか、答えはすぐに出る」

 あれから1年がたち、2人はそれぞれの目標に向かって歩みを進めている。健大高崎の「佐藤と石垣物語」を結末まで追っていきたい。(アマチュア野球担当・柳内 遼平)

 ◇石垣 元気(いしがき・げんき)2007年(平19)8月16日生まれ、北海道登別市出身の17歳。登別市立西小1年から柏木ジュニアーズで野球を始める。登別西陵中では洞爺湖リトルシニアに所属し、北海道選抜に選出。憧れの選手はオリックス・山下。好きな芸能人は佐藤二朗。1メートル80、76キロ。右投げ左打ち。

 

 ◇佐藤 龍月(さとう・りゅうが)2007年(平19)7月13日生まれ、川崎市出身の17歳。下小田中小1年から陣屋少年野球部で野球を始め、西中原中では東京城南ボーイズに所属し、U―15侍ジャパンに選出。憧れの選手はドジャース・大谷。好きな芸能人は今田美桜。1メートル74、73キロ。左投げ左打ち。

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