輝きを取り戻すための1年が始まった。東芝・藤村哲之投手(26)は入社5年目となる今季、開幕からのスタートダッシュをもくろむ。
「去年は都市対抗予選も含めて結果を出せずにチームに迷惑をかけてしまった。今年はスタートから1年間、フル回転で貢献したい思いがあります」
抜群の制球力と緩急が持ち味の左腕。直球の精度を高めるべく、今オフは全身のウエートトレーニングとシャドーピッチングに励む。1月からはロッテ、ロイヤルズで活躍した薮田安彦氏がエグゼクティブ・アドバイザーに就任。二人三脚で投球フォームの修正に乗り出した。
「昨年はチェンジアップに頼りすぎた部分もあって、真っすぐが疎かになってしまった。基本は真っすぐあっての変化球。そこはしっかり意識していきます」
課題を克服する準備はできている。昨季は体重移動の際、従来より上半身の回旋動作が早く始まっていたため、右肩の開きも早くなっていた。結果、上半身の力に頼った投球となり直球のスピードが減速。146キロだった最速は、140キロまで落ち込んだ。「腕を振るのではなく、体のねじれで勝手に腕が振られる」という下半身主導のフォームを習得するため、今オフは軸足である左足の使い方を修正。踏み出した右足が着地するまで全身の動きがキャッチャー方向に対して真っすぐ進むようになれば自ずと再現性は高まり、ボールのキレと球速のアップがそれぞれ期待できる。
「昨年の日本選手権はチームの勝敗に直接、関与できないもどかしさというのをすごく感じました。大会が終わり、もう1年やれるとなった時、後悔したくないという思いが生まれて、今、しっかり取り組めていると思います。都市対抗予選の悔しさと選手権で感じたことを忘れず、1年間、やっていきます」
今季を戦う上で、大きな原動力がある。昨秋の日本選手権。新人だった21年から順調にキャリアを積んできたが、2大大会出場時で初めてベンチから外れた。もちろん、藤村にとって一番大切なのは「チームが勝つこと」。だからこそ、ユニホームを着ることなく、ブルペンで過ごした3試合は、選手としてチームに貢献できない悔しさだけが募った。
一方で、新たな気づきもあった。チームはいずれも優勝候補と目されたHonda熊本、ヤマハを下して8強に進出。俯瞰して試合を観戦できたことで、仲間が持つ能力の高さを思い知った。
「個々の力は優勝するチームに負けていないな、と。あとはもっと一体感を持てるようになれば、勝ち上がっていけるようになる。僕だけじゃなく、チーム全員が感じたと思います」
藤村が真価を発揮すれば、投手力は格段に安定感を増すこととなる。一丸野球で臨む2025年。都市対抗優勝7度を誇る名門もまた輝きを取り戻す。