◇佐々木朗希 ドジャース入団会見
23歳。1年を通してローテーションを守った経験がなく「時期尚早」との声もある中で、佐々木はなぜ大リーグ移籍を急いだのか。
「あと2年待てば、という声も多く聞くけど、その2年をどういった状態で迎えるかの保証はない。お金より、この2年間を(米国で)過ごす時間が僕にとって価値のあるものだと判断した」
「25歳ルール」でマイナー契約しか結べず、契約金は650万ドル(約10億2000万円)。古巣ロッテへの譲渡金は25%の約2億5500万円にとどまった。仮に2年待って25歳になれば昨年の山本と同じケースになり、山本の12年総額3億2500万ドル(決定時約462億円)に匹敵する契約も可能だった。だが、佐々木が選んだ「時間」は、お金に換えられるものではない。
プロ1年目の20年は1、2軍で実戦登板がなかった。佐々木は22日放送のNHKの番組で、同年3月に右肘を肉離れしていたと告白。手術を勧められるほどの故障に苦しみ「いつ投げられなくなるか、野球ができなくなるか…」との不安と闘っていたという。未来は誰にも分からない。この経験が、早期移籍への思いにつながった。
父や祖父母を亡くした東日本大震災の記憶も胸に刻まれる。大切なのは、今。「自分も被災して苦しい思いをした。目標を見失わない、前を向き続けることだけは忘れないようにしていた」。ロサンゼルスは現在、大規模な山火事に襲われている。「街もつらい状況だけど、自分もドジャースの一員としてロサンゼルスの皆さんと一緒に前を向いて頑張っていきたい」。未来を信じ、力強く生きる。そのスタンスは、変わらない。