NHKは24日、2026年度前期の連続テレビ小説(第114作)の制作発表・主演会見を行い、生きづらさを抱えた2人の女性が看護の世界に飛び込むオリジナルドラマを放送すると発表した。タイトルは「風、薫る」で、ヒロインは同局大河ドラマ「光る君へ」で存在感を発揮した女優・見上愛(24)が務める。制作統括の松園武大氏が取材に応じ、物語への思いを語った。
物語の舞台は、文明開化が急速に進む明治時代。まだ女性の職業が確立されていない時代に、看護の世界に飛び込んだ2人の女性を巡る物語。実在した大関和(おおぜき・ちか)さんと鈴木雅(すずき・まさ)さんという2人の人物をモチーフとするが、激動の時代を生きた2人のナースとその仲間たちを波乱万丈の物語として大胆に再構成する。見上は、栃木・那須の山すその村で生まれた一ノ瀬りんを演じる。
朝ドラとしては異色となる、08年後期「だんだん」以来17年ぶりの「ダブルヒロイン」作となり、もう一人の主役は、きょう24日から募集を開始するオーディションで選ぶ。
会見に出席した見上は、朝ドラ初出演で初主演に抜てきされ、涙ながらに喜びを語り「明治時代を演じるのも初めてでバディーものを演じるのも初めてで、看護師の役も少しやったことあるんですけど、所作をしっかり学ぶのは初めて。初めてづくしを楽しんでいけたら」と笑顔で呼びかけた。
制作統括は大河ドラマ「光る君へ」の制作統括を務めた松園武大氏。物語について「原作はなし」と説明。「原案は田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』です。田中ひかるさんの原案を参考にしながら取材に行い、その取材に基づいて吉澤さんがドラマを描く。あくまで原案です」と明かした。
実在の人物である大関さん、鈴木さんがモチーフとなるが「資料が非常に少なく、特に私生活はほとんど残っていない」といい、「お2人の史実からは変更を加えている部分が多くなる」と説明。原案となる資料については「田中さんはお2人のことを研究され、2人の友情をほりさげてこの本を書いた。我々はそこに共感して原案とさせていただきました」と理解を求めた。
脚本は、TBS系「あなたのことはそれほど」(17年)「初めて恋をした日に読む話」(19年)などを手掛けた吉澤智子氏が務める。吉澤氏は、「看護の始まりの物語であると同時に、女性2人のバディー。“女性のバディーものを書きたい”とずっと話していたのですが、なかなか実現しなかったんです」と、念願の女性バディーものだと熱弁。「“女の友情も悪くない、女の友情はたくましい”と思っていたので、看護の世界でバディーものを描けるのをとてもうれしく思っています」としみじみと語り、自身が2年前にヘルニアで入院したときのエピソードを振り返り「看護師さんはとっても優しいたくましさがある。ふわふわした優しさではなくて、つらい時でもキリッと、そしてニコッと笑える、手を動かして働けるようなたくましい優しさがあるなと思っています。そんな、優しいたくましさをもった2人のバディーものになれば」と意気込んだ。
朝ドラの「Wヒロイン」は、96年後期の連続テレビ小説「ふたりっ子」、08年後期「だんだん」が双子の物語で描かれ、母娘のダブルヒロインのストーリーとして「青春家族」「京、ふたり」「おんなは度胸」があった。いずれも家族2人の姿を描いたもの。21年後期の「カムカムエヴリバディ」も朝ドラ史上初のヒロイン3人で展開したが、3代に渡るファミリーストーリー。家族ではない2人をヒロインとした作品は異色となる。松園氏は、朝ドラのWヒロインについては「『だんだん』以来」17年ぶりと説明した。