第97回選抜高校野球大会(3月18日から13日間、甲子園)の出場32校を決める選考委員会が24日、大阪市内で開かれた。横浜清陵(神奈川)が21世紀枠で選出された。
共有するグラウンドで練習していたサッカー部から、25人の部員に「おめでとう!」と拍手が送られた。全国屈指の激戦区の神奈川から初の21世紀枠。しかも同県の公立校が甲子園に出場するのはY校の愛称で親しまれる横浜商の97年春以来28年ぶり。約500メートル離れた位置に隣接するご近所以来の吉報にも野原慎太郎監督(42)の顔は引き締まったままだ。
「関東大会の上位までいっていないので、手放しで喜べない。喜びやうれしいより、使命感、責任を強く感じている。取り組みを認めてくださった方には感謝の気持ちでいっぱい」
県立だと54年の湘南以来71年ぶりの快挙を報告されたナインも表情変えることなくしばし沈黙。野原監督が「誠実で純朴。沈黙も“自分たちでいいのかな”と思ってね」と表現した教え子たちと取り組んできた部運営が選出につながった。
選手が主体的に練習メニューなどを決める「自治」を重視する。打撃や走塁だけでなく、「整備」「親睦」といった部門も設けて、各部門のリーダーを決定。毎週月曜にリーダー同士で話し合い1週間のメニューを作成する。午後7時完全下校のため、平日の練習は午後4時から2時間半。週末はサッカー部と交代でグラウンドを使用するなど限られた環境でも「自治」で成長し、昨秋の県大会は公立校唯一の8強入りを果たした。
選考委員長の宝馨高野連会長は「他のクラブにも好影響。意識を変え、知恵を使えば、強豪校がしのぎを削る神奈川県で結果を残せるというロールモデルになるのでは」と選考理由を説明した。
同校初の聖地。野原監督は「今まで以上にいつも通りを意識しないといけない」とかぶとの緒を締めた。山本康太主将(2年)も「チームの目標は甲子園で勝つこと。まだ達成していない」と浮かれる様子はない。甲子園でもチームスローガン「準備 全力 最後まで」をいつも通り貫く。