第97回選抜高校野球大会(3月18日から13日間、甲子園)の出場校を決める選考委員会が24日に開かれ、浦和実(埼玉)が創部50年の節目に初の甲子園切符を手にした。指導歴37年の辻川正彦監督は「本当に長かった」と男泣き。強豪の壁にはね返され続けた過去を振り返り、「激戦区の埼玉ですから、諦めていた時期もあった。もう無理なのかなと思うときもあったけれど、頑張っていて良かった」と感慨に浸った。
浦和実は部員51人全員が自宅からの通学生。強豪ひしめく県内で、寮を持たない高校の甲子園出場は珍しい。98年夏に公立の滑川(現滑川総合)が聖地の土を踏んだが、その後は浦和学院、花咲徳栄、春日部共栄など私学の時代が続いた。全国から選手が集まり、寮生活を送る。野球に打ち込む環境がある。その差を埋めるのは簡単ではなかった。
転機は昨夏だった。4回戦で春日部共栄にコールド負け。「昔の野球ではダメだと」。辻川監督は決断した。髪型の自由化。練習時間の短縮。ベンチ入りメンバーは選手間投票で決めた。時代に合わせた指導を心掛けると、選手たちにも自主性が芽生えてきた。
小野蓮主将(3年)は「自分たちで物事を言えるようになった」と明かす。練習時間が限られる中、移動中のバス車内でミーティングを導入した。声出しやあいさつの意識も変わった。昨秋の県大会準々決勝で浦和学院を撃破。同地区の強豪からの白星は、創部50年で3度目のことだった。粘り強く、勝負強いチームへと進化を遂げた。
浦和学院のグラウンドは目と鼻の先にあり、ナインの「打倒・浦学」の意識は根強い。「浦和と言ったら浦和学院。高校野球ファンのイメージを覆す野球を見せたい」。夢舞台を前に、小野主将は反骨心たっぷりに決意表明した。